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「きゃああ――!」
周辺から悲鳴が聞こえ我に返る。
足元には血溜まりができ、赤い血が車道へと流れた。
慌てて傷口をハンカチで押さえたが、白いハンカチは直ぐに真っ赤に染まった。
――誰か……
助けて…………。
声を発したくても、声にならない。
ザワザワと周囲に人が集まり始めた。
「大丈夫ですか?誰か……救急車を!」
痛みで……意識が……薄らいでいく……。
薄らぐ意識の中で……
俺の頭に浮かんだ顔は……
優香ではなく……
美咲の顔だった……。
――美咲……
すんげぇ痛てぇよ……。
我慢できねぇよ……。
巡回中だった小川巡査が、交番に戻って来た。自転車を投げ捨て俺に駆け寄る。
「中原!どうした!何があったんだ!中原―!」
「お……がわじゅんさ……」
小川巡査は直ぐに山田巡査に連絡を取る。スーツ姿の男が『犯人が逃走した』と証言し、小川巡査は警察署に応援を頼んだ。
大丈夫だ……。
痛みがわかるから……
俺は……まだ生きてる。
でも、血が……止まらないよ。
交番に山田巡査が戻ったのとほぼ同時に、警察署から警察官が駆けつけた。
救急車も到着し、タンカに乗せられ運ばれる。偶然居合わせた報道関係者が俺を撮影している。
「恵太ぁ―!恵太―!死んだらあかんで――!」
遠くで、美咲……の声がした……。
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