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 だって、異世ファンのタカは金髪のウルフ。顔はウルフメイクだし、矢吹君とは全然違う。


 ――待って、異世界ファンタジーのメンバーは四人。セガは黒いマントを付けたドラキュラメイク。けど、腰にはジャラジャラとチェーンをぶら下げていた。


 まるで、矢吹君の従弟、黒澤瀬我くろさわせがみたい。

 確かに、ドラムのセガは不良系キャラだけど、矢吹君の従弟とは全然違うし。


 キーボードのナギは水色の髪色をした妖精キャラで、性別不詳。異世ファンのライブでナギのメイクを真似て行ったら、ファンに本人と間違えられて追いかけられて、騒動になったことがある。


 それくらい……

 メイクをした私はナギに似ているのだ。


 私と似ているといえば……

 涼風凪すずかぜなぎは、私にそっくりだった。


 でも、ギターのナイトがいない。

 そうだよ、異世界ファンタジーのメンバーは四人だ。矢吹君の周辺にナイトらしき人物なんていない。


 私、バカだね。

 矢吹君が芸能界だなんていうから、映画のジャンルが異世界ファンタジーだっていうから、無理矢理思考回路が『異世ファン』とリンクしてしまった。

 

 矢吹君がいけないんだよ。

 異世界ファンタジーのキャラクターグッズを、誕生日プレゼントにするから。


 でも矢吹君の話が本当なら、私は俳優矢吹貴とキスしたの?


 いや……まだ、映画は公開されてない。

 待って、待って、もう俳優になってるんだよね?


 混乱した私は、口を開けたままポカンとしている。


「酸欠の金魚みたいだね。驚いた?」


「あわわ、酸欠の金魚だなんて酷い。矢吹君が俳優だなんて言い出すから……」


 私は右手の薬指で光るサファイアのリングを見る。


 俳優になった矢吹君から、こんなの貰っていいのかな。


「日本の撮影が終わったら、今度はアメリカでの撮影なんだ」


「……えっ?」


 やっと逢えたのに、またアメリカに行くといわれ、天国から一気に奈落の底だ。


「また暫く逢えなくなる。そんな顔しないで。ほら、俺も見て……」



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