【7】初めてだから初体験……? 摩訶不思議。

優香side

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 カラオケ店の個室。

 矢吹君は突然黙り込み、何か考え込んでいた。


 そんなに職業が言えないのかな。

 私、悪いことを聞いてしまったのかな。


 落ち零れの私でも就職出来たんだから、矢吹君もきっと就職してると思い込んでいた。

 

「えっと……。無理に言わなくていいよ。私ね、矢吹君がまだ就活中でも構わない。でも、就活中なら、こんな高価なプレゼントしなくていいよ」


 矢吹君は口元を緩ませ、私を見つめた。


「ごめん。ちょっと考えごとをしていた。優香とこんな風に再会出来ると思っていなかったから。俺の仕事は……、優香、笑うなよ」


「えっ?笑うような仕事なの?お笑い芸人とか?まさか、芸人だなんてそんなことナイよね?」


「お笑い芸人か?そんな風に見える?俺ギャグは苦手なんだけど。でも人前に出る仕事だから似たようなものかな。実は俳優してるんだ」


「へっ…!?はい?今、なんて言ったの?」


 矢吹君がサラリと言った言葉。

 『はいゆう』って、

 まさかね?身近な人が芸能界だなんて、想像もつかない。


「優香聞いてる?親の力を借りず、この世界で生きていくには、やはり何かをしなければ生活は出来ない。好きな音楽は一人では出来ないから、映画のオーディション受けたんだ。そしたら採用された。どうやら、英語が役に立ったみたいだね」


「……それ、ジョークじゃなくて、まじで?」


矢吹君が映画?オーディション?俳優?


嘘……!?


「映画界のドン西本監督とアメリカのチャールズ監督の日米合作、『世界の最後に君を抱きしめたい』って映画なんだけど知ってる?」


「勿論知ってるよ!だって、アイドルで女優の風月桜ふうげつさくらちゃんとか出るんだよ!超話題作異世界ファンタジー!」


 ん?異世界ファンタジー?

 矢吹君は『好きな音楽は一人では出来ないから』って、さっき言った……?


 矢吹君が去年くれた誕生日プレゼントは、異世界ファンタジーのキャラクターグッズ、ウルフだった。


 なーんて。

 これは偶然だ。


 矢吹君とミュージシャン『異世界ファンタジー』が結びつくはずはない。

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