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「俺達人族は、元々地球からこの王国に転移した日本人です。ギダ王子とアリシアを生き返らせるために、エルフ王の条件を受け入れ、アギ王女との婚約を承諾しましたが、好きな人がいることはアギ王女に正直にお話するつもりでした」


「私達は似た者同士のようね」


「俺は彼女に逢うために、再び地球に転移します。ギダ王子を暗殺した犯人が、彼女の命を狙っているやもしれません。その者にアギ王女との婚約が知れれば、暗殺者がアギ王女のお命を狙うやも……」


「エルフ王の第一王女の命を狙う愚か者はこの王国にはいないわ。神秘の湖がある限り、エルフの平和は永遠に続くのだから」


 エルフの湖畔には、あの野蛮な獣族軍も踏み込むことはない。


「タカ王子はその人を守るために、地球に転移するのね。わかりました。お父様には、時期を見て私とリルクのことを話すつもりです。

 タカ王子の大切な人を守るために、私から魔法のリングをプレゼントするわ」


 アギ王女は虹色のスティックを取り出し、ハートを描く。アギ王女の手のひらの上に、小さなリングが二つ現れた。


 ひとつはプラチナのリングに星のデザインが施され、ひとつは青藍色透明に煌めくサファイアが施されている。まるで湖水を宝石に変えたような美しい色だ。


「……これは?」


「このリングにはエルフの魔力が込められています。二人が心から愛し合い結ばれているのなら、このリングが彼女を守ってくれるわ」


「二人が心から愛し合い……。アギ王女、ありがとう」


 アギ王女が再び虹色のスティックを振ると、ひとつは俺の右手の薬指に。もうひとつはリングは、ケースに収まりピンク色の包装紙でラッピングされた。


「さあ、タカ王子、お行きなさい。私のことは心配御無用。お父様に見つからぬうちに、一刻も早くエルフの湖畔から出るのよ」


 リルクは洞窟の外に繋いでいた白いペガサスを俺に差し出す。


「ペガサスが森までお送りします。そのあとは、あなたのお側にお仕えします。いずれ役に立つ時がくるでしょう」


「アギ王女、リルクさん、ありがとう。お幸せに!ナギに『セガのことを頼む』と伝えて下さい」


「必ずや伝えます」


 俺はアギ王女から貰ったリングをポケットに入れる。白いペガサスに飛び乗ると、ペガサスは白い翼を羽ばたかせ、青空を駆け抜ける。


 地上に広がる美しいエルフの湖畔を眺めながら、俺は深い森を目指した。

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