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国王陛下が俺に歩み寄り、手を握り締め懇願した。
「タカ王子、今までのことは全部不問とする。お願いだ……。ギダ殿下を助けてくれ。お願いだ……。お前も王妃の悲しむ姿は見たくはないだろう」
「……国王陛下。ギダ殿下とアリシアを暗殺したのはセガではありません。きっと……獣族軍のエジソン大元帥とレオン大佐です」
この俺に頭を下げる国王陛下に、ノーとは言えなかった。でも、せめてセガの無罪だけでも証明しなければ。
「……エルフ王に頼みがある。婚約はするが、結婚は待って欲しい。ナイトを必ず王国に連れ戻す。ナイトの魔術を解くことも結婚の条件に加えてくれないと、了承することは出来ない」
「よかろう。もしも裏切ることあらば、その時は容赦しないからな。パギよ、ギダ殿下とアリシアを生き返らせよ」
「やれやれ。エルフ王の命令ならば、致し方ないのぅ」
魔術師が小瓶に入った聖水を屍に振りかけると、ギダ殿下とアリシアの体が、コバルトブルーの湖水に包まれた。その体はみるみる小さくなり、その姿は胎内の羊水に宿る赤ちゃんのようだ。
二人の周辺を、キラキラと煌めく球体が二つ蛍のように飛び交う。
魔術師はその煌めく球体のひとつを両手で掴むと、フゥーと赤い息を吹きかけた。
煌めいていた球体が、まるで生き物のようにトクントクンと赤く蠢く。
魔術師はそれをギダ殿下の胸に押し込んだ。
同じように浮遊していたもうひとつの煌めく球体を両手で掴み、フゥーと赤い息を吹きかける。トクントクンと赤く蠢く球体を、アリシアの胸に押し込む。
――トクントクン……。
二人を包んでいた湖水が、脈打つように揺れ始めた。ギダ殿下の指先とアリシアの指先が微かに動いた。
ギダ殿下の瞼がピクピクと反応する。
それと同時に、アリシアの唇が微かに動いた。
「フギャアー…フギャアー…」
「オギャアー…!オギャアー…!」
赤ちゃんの泣き声と共に、二人を包んでいた膜がパチンと割れ湖水が周辺に飛び散る。胎内から排出された赤子のように、二人の赤ちゃんはベッドの上に生まれ落ちた。
「……何ということだ」
「国王陛下、お約束通りギダ殿下とアリシアを生き返らせました。タカ王子とアギ王女の婚約成立で宜しいですね」
「……ああ。この赤子が……ギダ殿下とアリシアなのか……」
「さようでございます。では、タカ王子、婚約者アギ王女とこれから逢っていただきましょう」
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