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 ―渋谷のカラオケ店『pK』―


 私と美子が高校の時によく利用していた店だ。

 嬉しい時も、楽しい時も、悲しい時も、悔しい時も、美子と大声で歌い吹き飛ばした。


 懐かしい青春の一ページ。

 恵太とのことで、蟠りが生じた時もここに来たっけ。


「いらっしゃいませ。優香ちゃん久しぶりだね。あれ?今日は美子ちゃんと一緒じゃないの?」


 顔馴染みの店員が、私に声を掛けた。隣にいた矢吹君の顔ををまじまじと見つめる。


「うん、今日は……違うの」


「いつもの部屋予約で押さえてあるから。オーダーは電話してね」


「はい。ありがとう」


 カラオケの個室なのに。

 私はド緊張している。


 個室に入ると、私は矢吹君と向かい合ってソファーに座った。


「こっちにおいでよ」


 矢吹君の隣に座ったら死んじゃうよ。

 今だって、心臓が爆発しそうなくらいドキドキしてるんだから。


「いえ、ここで……」


「声が聞こえないよ。こっちに来ないなら、俺がそっちに座る」


 うわっ、まじで?


 矢吹君が立ち上がり私の隣に座った。

 体が触れそうなくらいの至近距離。


 ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ……。


 やばい。死ぬ……。


 顔は火照り、活火山みたいに噴火寸前だ。


 緊張しすぎて、息が……ああ、上手く吸えない。


「久しぶりだね。遅くなったけど、これ誕生日プレゼント」


「……えっ?誕生日……覚えていてくれたの?」


「遅くなってごめん。誕生日を忘れていたわけじゃない。日本に戻ったから、直接逢って渡したかったから」


 私の掌の上に小さな包みが渡された。

 ピンク色の包装紙、ゴールドのリボン。


 矢吹君、私の誕生日……

 忘れてなかったんだ……。

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