25

 二階の窓から美子の車を確認し、階段を降りる。かめなしさんも一緒に付いて降りた。


『俺も一緒に行こうかな。そしたらデートできるし』


 ふざけた言葉をスルーし、玄関ドアを開ける。


「かめなしさん、行ってきます」


『おいっ!こらっ!聞いてんの?スルーかよ。優香、忘れ物だぞ』


「えっ?何?」


『行ってきますの


「はっ?


 またこの生活が始まったんだ。

 かめなしさんのセクハラをかわさなければいけないなんて。


 話が出来るのは嬉しいけど、その反面厄介だな。かめなしさんは猫耳あるけどイケメンだし、他の動物みたいに毛むくじゃらではないし。人間と同じ肌をしてる。


 それにあのキリッとした目で見つめられたら、たまにドキッとする。


 玄関のドアを閉めると、内側からガリガリと音がした。かめなしさんが爪を立てているに違いない。


 外見は人間だけど、やることは猫なんだから。


『こらっ!キス!キス!くぅ、ドアが閉まったし。ちぇっ……』


 声が聞こえるのも、良し悪しだね。

 半ば呆れながら、美子の車に近付く。


「美子、おはよう!新車、ピカピカだね」


「おはよう。早起きして洗車したの。優香、早く乗りなよ。今日は何処行く?」


「表参道にしない?ブランドのショップ沢山あるし」


「うん、いいね。そのあとは久々に渋谷のカラオケにしよう」


「うん。久しぶりだね、カラオケ。超楽しみ」


 美子の車の助手席。彼氏もこの車に時々乗ることがあるらしく、その助手席に私が座るなんて、彼氏に申し訳ないな。


 車中で彼氏の話をノロケる美子。

 幸せそうで羨ましい。


 表参道のパーキングに車を停めて、二人でウィンドウショッピングをした。


 次々とブランドショップに入る。


「年上の銀行マンなんだから、プレゼントするならやっぱりブランド品だよね」


「そうだよね。彼のお気に入りのブランドがあるんだ」


 結局、彼のお気に入りのショップで長財布を購入した。


 そのあと私達は渋谷に移動し、大好きなオムライス専門店でランチをした。


「ねぇ、美子。学生の頃によく行ったゲーセン行ってみない?」


「ゲーセン?うふふ、懐かしいね。行こう」


 高校生の頃、学校帰りによく立ち寄ったゲーセン。


 矢吹君と……初めて逢ったゲーセン。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る