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「ぐぇ、ぐぇ……して(離して)」


「やだ。『キスして』やなんて。恵太ったらぁ」


 美咲が体をくねらせ、一瞬両手を離した。


「ゲホッゲホッゲホッ、誰もそんなこと言ってない。ゲホッゲホッ(殺す気か)」


「恵太、風邪引いたんか?裸で寝るからやでぇ。うちも裸やけど」


 俺を裸にしたのは、美咲だろ。


「あの……俺、昨日なんかしました?全然覚えてないんやけど」


「は?ありえへん。覚えてへんの?恥ずかしがらんでもええよ」


 やっぱ……シたんだ……。


 ――ガガーンッ……


 目の前が……蛸に墨を吐かれたみたいに真っ黒になる。


「うちが教えてあげたやんか〜。うふふっ、恵太がまさか初めてやなんてなぁ。でも上手うまかったで。合格や」


「な……な……な……」


 余計な事を。

 教えてくれなんて、俺は頼んでねぇ。

 何が合格だ。不合格にしてくれよ。


「そないに緊張せんかて、不安なら、もう一回復習してみる?うちは何度でも受けて立つで。体力なら自信あるからな」


「……け、結構です!」


 俺は顔面蒼白を通り越し、ゾンビみたいに土色になる。


 優香……。


 お……俺……浮気しちゃった。


 ごめん……許してくれ。


 これは……不慮の事故なんだよ。


 いや、もしかしたら俺は、美咲に襲われたのかも?


 そーだよ。そうに違いない。

 優香に一途な俺が、浮気なんてするはずないんだ。


 不慮の事故なんて甘いもんじゃねぇ。

 これは事件だ。


 もう、優香に合わせる顔ねぇよ。


 なんで節操がねぇの?俺のオレ。

 相手を選ぶことくらい出来るだろ。


 美咲は体にバスタオルを巻きベッドから立ち上がる。一枚では足りず二枚繋ぎだ。


「恵太、シャワー借りてもかまへん?」


 勝手に使え。

 象が水浴びするみたいに、好きなだけ浴びるがいい。


 俺、もしかして……

 一夜の過ちで、一生美咲から逃げれねぇの!?


 優香……。


 俺、一生ゾンビになります。



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