21

「……そやな」


 優柔不断な俺は、美咲の誘いを断れない。


「ほな、行こか」


 美咲に腕を掴まれ、繁華街へ連行される。


 俺はアルコールに弱いんだ。

 逆に、美咲は超強い。


 あの体形だ。

 樽ごとでもイケそうだよな。


 体も豪快なら、飲みっぷりも豪快。

 いつもなら翌日の仕事を口実にセーブする。だから記憶を無くすまで飲んだことは、過去に一度もない。


 それなのに……

 その日の俺は、つい飲み過ぎた。


 明日が休みだという安心感もあり、椀子蕎麦のようにひっきりなしにお酌する美咲のペースに乗せられ、グイグイいってしまったのだ。


 そうすれば、美咲から解放されると思ったから。


 世にも怖い事態が、この後、俺を待ち構えていたなんて……


 この時の俺は、思ってもいなかった。


 ◇


 んん……ん……苦しい……。


 呼吸が……で、出来ない……。


「ふうっ……ふうっ……」


 これは金縛りか……。

 体が……ビクとも動かない。


「……うおおっ!」


 全身に力を入れ重い瞼を開けると、そこはワンルームマンションだった。


 よく目を凝らして見ると、俺のマンションだ。警察学校を卒業し派出所勤務となり、派出所近くのマンションを借り独り暮らしを始めたばかり。


 まだ他人の部屋のようで、馴染みが薄い。


「なんだ、俺の部屋か……」


 どうやって帰宅したのか、記憶は欠落しているが、どうやら無事に帰宅したらしい。


 安堵したのも束の間、胸の圧迫感はハンパなく息苦しい。何かが体の上に乗っている。


「重っ……」


 重い?


 金縛りか?


 まさかな。


 恐る恐る掛け布団をめくる。

 そこには巨大な肉の塊があった。


 何これ?

 俺はまだ夢を見ているのか?


 巨大な肉の塊……?

 暗闇の中で、指らしきものが動いた。


 人間の足?いや……腕……?


 う、腕……!?


 一気に血の気が引く。


「ひ、ひゃああー!!」

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