【4】最強パンダに奪われた? 摩訶不思議。

恵太side

19

 ―大阪―


 長年の夢だった警察官、黙々と勉強し、体力をつけるためにスポーツジムに通い、休日は剣道や柔道も習い、地道に努力を重ねた。


 本当は東京都の採用試験を受けるつもりだったが、父の転勤も決まり家族揃って大阪に転居することになり、大阪府警の採用試験を受けた。


 友達にも、幼なじみの美子や優香にも言わなかったのは、東京から離れることへの寂しさと、夢が叶わなかった時の悔しさを、みんなの前でさらけ出したくなかったから。


 ただでさえカッコ悪いのに、もっとカッコ悪い姿を、優香に見せたくなかったんだ。


 でも運命の神様は、こんな俺に微笑んだ。

 奇跡的に採用試験に合格した俺は、警察学校を経て大阪の中心地に近い警察署地域課に属し繁華街にある交番勤務となった。


 中原 恵太は夢を叶え、警察官になったんだ。


 自分でも、ちょっと信じられなかったけどな。


 夢にまで見た警察官の制服。


 ちょっと、カッコよくね?

 まじで、カッコイイから。


 一年大阪にいるだけで、弟はもう関西弁になり、両親もすでに影響されている。周辺では関西弁が飛び交い、標準語を話していると、妙に浮いている気がして、俺の日常会話は関西弁になりつつある。


 ……と言っても、大阪の人が聞いたらたぶん妙な関西弁だ。まるでカタコトの日本語を話す外人みたいに。


「おまわりさ〜ん。うちなぁ〜わからへんねん」


 交番には夜な夜な酔っ払いが訪れる。

 今日はOL風の女性だ。泥酔するのは水商売の人間ではなく、一般企業に勤めている者の方が、酒に飲まれる傾向にある。


 女性は椅子に座り、デスクに突っ伏した。


「お姉さん、わからへんって?何がわからへんの?」


「………ぐぅ」


「……って、おいっ!ここで寝んとってや。……まったく、どうして交番で寝るかな。ここはカプセルホテルじゃないんだよ。お姉さん、お姉さん、起きてんか」


 話し掛けても、肩を揺すっても、ピクリともしない。むやみやたらに体に触れて、セクハラとか痴漢とか勘違いされても困る。


 仕方がない。

 少しだけ、ここに寝かせておくか。


 繁華街に位置する交番、夜になると連日酔っ払いばかりだ。


 交番には俺以外に、ベテランの警察官が二人勤務している。交番勤務は一勤ニ休制。間で合計八時間程度の休憩を取る。

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