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「だからね、大人しくしてなきゃダメだよ。暴れて傷口が開いたら大変だからね」
『うん、わかったよ。大人しくする』
「うん、これでチョコの部屋の掃除はOK、次は豆太ね」
『……ま、待って』
豆太はまだケージの隅でブルブル小刻みに震えてる。
「まだ、私のことが怖いの?」
『い……いや……びっくりしてオシッコちびっちゃった』
「そっか。驚かせてごめんね。そんなこと気にしなくていいよ。今から掃除するからね」
私は豆太を抱き上げ、ケージの外に出す。豆太は恥ずかしそうに汚れた洋服を取り替え、私を見つめた。
『ねぇ、平気な顔してるけど、僕らの声聞いて驚かないの?』
「うん……。前はね、びっくりした」
『前って?初めてじゃないの?』
「うん、一年前にもちょっとね」
『すご~い。優香って特殊能力があるんだね?』
「ふふっ、特殊能力?わかんないよ。豆太の部屋も綺麗になったからね。いいウンチ出てる。下痢も嘔吐も治まってきたね」
『うん。今朝も朝ご飯ちゃんと食べたよ。でもドロドロのご飯はもう飽きた。そろそろ普通のドッグフードが食べたいな』
「これならお昼は普通のドッグフードでOKかも。あとで先生に診てもらおうね」
『まじで?まじで?』
「うん」
『やったぁ〜!注射もなしだよね?』
「うん、多分大丈夫だよ」
豆太は小さな体でぴょんぴょん飛び跳ねながら、無邪気に笑った。生意気な児童だと思っていたけど、豆太は可愛い男の子だ。
私はヨークシャーテリア、シーズー、雑種の仔猫、シャム、アメリカンショートヘアに同じように話し掛けながら、ケージの掃除をした。
シャムの名前はわからない。人間なら推定三十歳くらい。人間不信で凶暴。数日前、右足を負傷し弱っているところを保護された迷い猫だ。
怪我は完治したが、飼い主が発見されるまで保護している。
アメリカショートヘアの名前もわからない。人間なら推定二十歳くらい。鋭い眼差し、瞳は深いブルー。不思議なことに、シャムのあとを追うように病院に迷い込んだ。
アメリカンショートヘアも飼い主が発見されるまで保護しているが、もしかしたら、二匹の飼い主は同じ人物の可能性もあると、先生は推測している。二匹ともこちらに背を向け顔を見せない。でも着用している服はよく似た黒い服。
雑種の仔猫の名前はタマ。
生後三ヶ月くらいの野良猫で、弱っているところを保護された。献身的な介護と点滴で元気回復だ。
この病院の獣医師は野良猫や野犬を保護しては、インターネットで里親を探し譲り渡している。先生は保健所の殺処分ゼロを目指し、慈善活動もしている。
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