13
『まったくよぉ、感じわりいな。おいっ!新人名前なんて言うんだよ?』
「名前?やだ、一年も勤めてるんだよ。まだ覚えてないの?上原優香だよ」
『看護助手の名前をいちいち覚えられっか。優香、サッサと掃除しろっ!』
「ん?しろって?それは命令かな?」
『ぐっ……。優香ちゃんして下さい』
「よしっ!じゃあ、掃除しますか」
私は一匹、いや、一人ずつケージの外へ出す。窮屈なケージから、外に出てチョコは『んーっ!』と、背伸びした。
私のパンツを見たチョコ。
目が合うと、ちょっと恥ずかしい。
『なぁ、なぁ、優香、何で俺達の言葉がわかんの?』
チョコが私の顔をマジマジと見つめる。
乱暴な口調と毛むくじゃらでなければ、見とれてしまうくらい可愛い。
私はゴム手袋を嵌め、ウンチの後始末をし、トイレシートを取り替える。除菌スプレーを吹き付けケージの中を丁寧に拭く。
「どうしてなのか、私にもわからないの。さっき階段から落ちたからかな?」
『嘘、そんだけ?』
「頭打ったからかな?本当にわからないんだ」
私は手際よく手を動かしながら、チョコと話をする。
「チョコ、足の傷はもう痛まない?」
『もう大丈夫。ピンピンしてる』
チョコは一週間前に後ろ足を怪我し縫合手術をしたが、術後の経過は順調だ。
「そう?よかったね。たぶんもうすぐ帰れるよ」
『嘘っ、マジマジ?』
「うん、先生がそう言ってたから」
『やったぁ!よかったぁ!』
チョコが嬉しそうに笑い、ちぎれんばかりに尻尾を振った。口は悪いけど可愛いな。きっと家族に愛されているんだね。
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