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『まったくよぉ、感じわりいな。おいっ!新人名前なんて言うんだよ?』


「名前?やだ、一年も勤めてるんだよ。まだ覚えてないの?上原優香だよ」


『看護助手の名前をいちいち覚えられっか。優香、サッサと掃除しろっ!』


「ん?しろって?それは命令かな?」


『ぐっ……。優香ちゃんして下さい』


「よしっ!じゃあ、掃除しますか」


 私は一匹、いや、一人ずつケージの外へ出す。窮屈なケージから、外に出てチョコは『んーっ!』と、背伸びした。


 私のパンツを見たチョコ。

 目が合うと、ちょっと恥ずかしい。


『なぁ、なぁ、優香、何で俺達の言葉がわかんの?』


 チョコが私の顔をマジマジと見つめる。

 乱暴な口調と毛むくじゃらでなければ、見とれてしまうくらい可愛い。


 私はゴム手袋を嵌め、ウンチの後始末をし、トイレシートを取り替える。除菌スプレーを吹き付けケージの中を丁寧に拭く。


「どうしてなのか、私にもわからないの。さっき階段から落ちたからかな?」


『嘘、そんだけ?』


「頭打ったからかな?本当にわからないんだ」


 私は手際よく手を動かしながら、チョコと話をする。


「チョコ、足の傷はもう痛まない?」


『もう大丈夫。ピンピンしてる』


 チョコは一週間前に後ろ足を怪我し縫合手術をしたが、術後の経過は順調だ。


「そう?よかったね。たぶんもうすぐ帰れるよ」


『嘘っ、マジマジ?』


「うん、先生がそう言ってたから」


『やったぁ!よかったぁ!』


 チョコが嬉しそうに笑い、ちぎれんばかりに尻尾を振った。口は悪いけど可愛いな。きっと家族に愛されているんだね。

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