143 殿中でござると、討ち入り

 お風呂から上がってきたレイアに、猫姫集会は監視しているゾディアックに対する嫌がらせだとちゃんと説明した。


 その後、みんなが揃ったので夕食にしたが、夕食の間メイド隊がニーニャの飛行船で遊び始めた。その為、ニーニャとにゃんこ共が落ち着きがなくなり、食事に集中できなくなった事から、メイド隊にゼータの雷が落ちる……。


 ニーニャはしっぽとミミをピンとさせて、レイアにしがみついて動かない。



「雷様にゃ……おへそを隠さにゃいと」


「雷属性は貴重だな」


「お、怒ると小皺……ヒッ! もう言いません……」


「……(ガクブル)……」


「お食事が終わってからお遊びくださいませ。よろしいですね」


「「「「……イエス、マム」」」」


「……あい」



 教育は必要だ。メイド隊は壁に一列に立たされている。どこぞの悪ガキだな……。


 しかし、良くできたおもちゃだ。通常ラジコンと呼ばれる類のものだな。プレイヤーでなければ思い付きもしないだろう。先に食事が済んだのでいじっていると、食べ終わったニーニャに持っていかれてしまった……。


 さくらくらいなら乗せても動きそうだったな。どの位の距離まで操作可能なんだろうか? それによってはドローンと同じ用途に使えるのではないだろうか? 可能なら戦術的優位に立てる事になる。これを作ったプレイヤーを探してみよう。出品者の名前はわかっているのでなんとかなるだろう。


 拡大モニターのような魔道具はオークションで使っていたのだから、ビデオカメラのようなものも作れるんじゃないかと思う。オールに研究させよう。そうしよう。


 さくら陣営は他の魔王に比べて一歩も二歩も出遅れている。その差を現代知識でカバーするしかない。知識チートという奴だが、この世界は現代と比べても劣っているわけではないのでなかなか難しい。知識というより発想の違いで勝負というところか。


 少しでも有利な状況で戦えることに越したことはない。次のゾディアック戦のシナリオの骨格は既にできており、あとはオメガ達に説明して有利になるように肉付けしていくだけだ。


 問題は北の魔王と今回加わった第二魔王の存在だ。そのせいで、勝つ戦いから負けない戦いのシナリオに修正を余儀なくされてしまった。


 明日の謁見式でどれだけ北の魔王にプレッシャーを与えられるかでも、変わってくるしな。ちなみに明日の謁見式には、オールの弟子達が使っていた変装用の魔道具で、ひなさんのドレスの裾持ちのひとりとして参加する。


 どんな、謁見式になるか楽しみだ。



 次の日の朝もメイド隊を連れて露店に行く。今日はゼータも連れてきた。メイド隊を統率してもらう為だ。午後からは謁見式で俺が居なくなるのでレイアだけではこのメイド隊を制御できないだろう。俺でも無理だからな。ビッシっと言えるゼータが適任だ。


 両脇の店のご主人と挨拶を交わし商品を陳列していると、弟子ふたりと一匹がやってきた。ダイチは謁見式で俺と一緒に裾持ちするので、今日は来ない。代わりにレイアとさくらが終始居るので問題はないと思う。


 心なしか、ムウちゃんの顔色が暗い。



「ムウちゃんどうしたんだ?」


「朝起きたら筋肉痛だったみたいです」


「馬鹿だよな。こいつ」


「キュピ~」



 馬鹿なユウに馬鹿呼ばわりされても、反撃できないとは相当きてるな。となると、今日はニーニャの独壇場だな。またファンが増えちゃうな。困ったもんだ。ニーニャ、頑張れ!


 折角なので、ニーニャ用のお立ち台を急遽用意する。使っていない棚をバラしただけなんだけどな。


 店を開けると昨日とは打って変わって大盛況。今日の祭りが終わると他の街に移動する行商人が拡張バックの噂を聞きつけて、王都を出る前に手に入れようと押し掛けた訳だ。


 まだまだ、品はある。存分に買って行き給え。途中何度か、所有者認定をしないで売れと騒いだ客がいたが、ユウに追っ払わせた。明らかに行商人ではない風体だったのでこの国の手の者かもしれない。逆に軍関係の者が来ると予想していたが、今のところ来ていない。来ないことに越したことはないけどね。


 拡張バックと並行してメイドさんLOVE入りクッキーも馬鹿売れだ。男性プレイヤーなどは、メイド隊にサインまで要求している。まあ、その位ならおお目に見るが、おさわりは切符切るからな。


 後は任せても良いだろう。イノセントハーツの砦に行かないとまずい。



「クェー」



 砦に着くとうちのペンギンがお出迎え。久しぶりにペン太を見た気がする。丁度、ミナが通りかかったのでペン太の事を聞いてみた。



「そうですね。たいてい、砦に居ると思います。カーちゃんと一緒にお姉さまたちから可愛がられていますからね」


「そうか……もう帰って来なくて良いぞ。優しいお姉さま方に可愛がってもらえ。みんなには俺から言っておく」


「クェッ!?」



 ペン太は足にしがみついてイヤイヤしている。えぇーい、離せ殿中でござる。ペン太と遊んでる暇は無いでござる。ミナ、後は任せた。良きにはからえ。


 事務所に行くとひなさんはお着替え中との事で、ダイチと食堂で昼にする事にした。



「おばちゃん。Aランチね」


「それじゃあ。スペシャルランチで」



 Aランチもスペシャルランチも値段はほとんど変わらない。ただ、A、Bランチは職員は無料で食べられる。ダイチって職員だったんだな……。


 食堂は満員御礼状態だ。



「結構増えたな」


「勧誘活動、頑張ってるからな」



 シルバーウィーク真っ只中という事もあり、ログインしているプレイヤーは多いだろう。



「Aランチ、スペシャルランチ、お待ち!」



 スペシャルランチは、パンとコンソメ風スープに餃子みたいな肉の餡を薄い皮で包んで焼いたものにポテトサラダだ。パンに餃子を挟んで付け合わせのソースをかけて食べると絶品だった。


 昼を済ませて事務所に戻ると悪の女幹部が居た。今回は顔半分をフェイスベールで隠している。どう見ても怪しい女占い師だな。



「ちょっとルークそんな格好で行く気なわけないわよね」


「えっ? 行く気ですよ」


「イヤイヤ、まずいだろう。例え従者だとしても」



 そういえば、ダイチは妙にこざっぱりした服を着ているな。仕方ない変身するか。トゥー!



「うわっ! びっくりした。なんだよそれ?」


「変身用の魔道具」


「いろんなもの持ってるわねぇ」


「オールの馬鹿弟子から没収した」



 奴らにはおからの持ち腐れ……もとい、宝の持ち腐れだからな、必要な者が有効活用しないと。




「そ、そうなんだ……」


「その格好なら問題ないな」


「それでは、乗り込みましょう」



 姐さん、討ち入りですか?


 る気満々ですね……。ちょっと心配だよ。





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