141 オークションでの爆買い

 ぐぬぬ。これじゃあ嫌がらせにならないじゃないか。


 その後も別荘だの豪華な馬車等が出てきたが、食指が動かない。



「エントリーナンバー88番。出品されますのは拡張オーブです。名前は判明していますが、用途は不明。魔道具制作に使われるものと言われています」



 おっ!? やっときた。


 プレイヤーが値を上げ始める。使い方を知っているのだろ。シーフ系の者なら喉から手が出る程、欲しいだろう。でもやらん。ちまちまと値が上がっているので、一気に値を上げる。


 八割が脱落した。残りは三人、魔術師っぽいNPCも残っている。更に一気に値を上げる。予想に反してNPCが残った。どうやら有名人らしい。宮廷魔術師筆頭とかって司会者が騒いでいるな。ふーん、だからなに?


 一騎打ちになったが相手にならなかった。祝! 初落札。


 この後も魔法石等、魔道具の作成に役立ちそうなものが出品されたので、全て落札した。オールに何か作らせよう。



「エントリーナンバー100番。残りも後わずかです。出品されますのは闇のオーブです。属性オーブは古来より信仰の対象にまでなった事のある品。使い方はわかっていませんが、身に宿し力を得られるなどと伝承などで伝わっています。市場に出る事はまずあり得ない品。この後にも土と氷のオーブが控えていますので、お楽しみください」



 面倒なので結果だけ、三つ共に落札しました。競合したのはNPCの宮廷魔術師筆頭、おそらくだが、こいつは国から命令されて落札しようとしてたのじゃないか? 


 奴の居るブースがここから見えるんだが、ひっきりなしに人が出入りして奴と話していた。今も射殺さんばかりに睨んできているので、微笑み返してやった。



「ルーク。悪い顔してます」



 レイアさん、心外です。俺の心は悪魔が住む魔界の如く、真闇に染まってますよ。フフフ……。


 これでオークションが終わりなのかな? と思ったら、どうやら飛び込みで出品できるそうだ。


 ネタ武器にネタ防具、試作アイテム、試作自転車まで、こちらの方が楽しい。


 なかでも試作飛空船が出た時、とある人物の琴線に触れたらしく



「にーに!」



 目を輝かせて見つめられる。勿論、落札しましたよ。なにか?


 折角なので、俺も珊瑚に囲まれし島のリゾート地の高級ホテルペア宿泊券を十組分出品した。


 間違いなく、本日一番の盛り上がりになった。オークション主催者はさぞや形無しだろう。狙った訳ではないが、今日一番の嫌がらせじゃないだろうか? クックック……。



「ルーク。更に悪い顔してますよ……」



 そう、俺は大宇宙のすべてを飲み込むブラックホールの如く、奴らに対して心が乾いているのさ。


 オークションも終わりさっさと露店に戻りたかったが、落札した金額が金額だけになかなか帰してもらえなかった……。


 落札した品を全て鑑定し、問題がない事を確認してさくらに収納してもらった。


 やっと解放され露店に戻ろうとすると、あの宮廷魔術師筆頭と大勢の取り巻きに囲まれる。



「少しばかり話があるのでね、ついて来てもらおうか」


「嫌だと言ったら」


「聞き分けが良いと、こちらとしては楽なのだがね」


「ゾディアックって、ほんと馬鹿しか居ないな……。セイさん~助けて~! 阿保なゾディアックの手先に絡まれてます~!」


「なっ!?」


「ハァ……。なぜ、そこで俺を呼ぶ」


「昼飯奢ったでしょう?」


「むっ、それを言われると反論できんな。こいつか?」


「こいつの顔知ってるにゃ。宮廷魔術師筆頭とかって言ってたにゃ」


「ゾディアックというのは、結構間の抜けた組織のようだな」



 おぉ、更紗さん。きついお言葉、ありがとう。もっと言ってやってください。



「お、お前達は何者だ。私が誰かわかって言ってるんだろうな!」


「明日になれば、嫌でも顔を合わせますよ」


「馬鹿はほっとくにゃ」


「ゾディアックという組織は本当にお粗末な組織だな。やれやれ」


「貴様ら! お前達なにをやってる! こいつ等を牢にぶち込め!」



 宮廷魔術師筆頭は頭から噴火でもするかの如く、顔を真っ赤にして喚き散らすが、取り巻きは周りをプレイヤーに囲まれている事に気付き動く事ができない。



「さっ、帰りましょう」


「「「お前が言うな(にゃ)!」」」



 帰りざま、歩きながらお城に手を振っておいた。振り向かないでな。どこかで見てるのは確実。ゾディアックの指示だったのか、あの男の独断行為なのかは知らないが、何をしたかったんだ? よくわからんな。


 まだまだ嫌がらせが足りないようだ、頑張らねば。


 中央広場まで戻ると各自解散となったので、助けてくれた見ず知らずのプレイヤーにもお礼を言って回った。


 セイさん達も明日の準備があるそうなので、ここで別れる事になった。


 みんなで露店に戻ると、まだ踊っている……。



「まだ踊ってるのかよ?」


「師匠が行ってからもずっとだ」


「マジっすか……。ダイチは?」



 ユウはカウンターを指差す。


 カウンターには、見た事がない魔族の女性がダイチに口説かれている真っ最中。


 口説き中のダイチには悪いが、魔族の女性は只者ではないな。敵か? 味方か?


 口説き中のダイチの横に行き、魔族の女性に問いかける。



「何者だ? 事と次第では生きて帰れると思うなよ」



 女魔族はスタッと立ちあがり、綺麗なお辞儀をしてきた。



わたくしは第二魔王アイト配下リートゥスと申します」



 ここにきて、魔王側から接触してきたか……。何が狙いだ? 今、会いに来たということは、明日の謁見式に絡む事なのか?


 ふーん。灸を据える……もとい、風雲急を告げるって奴だな。


 さて、どうするか。


 困った事に、判断材料が何にもない……。




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