129 ダゴン様との猥談……もとい、密談

 ロイヤルスイートルームに来ている。


 迷宮攻略が終了して迷宮の外に出ると、ガンマ22改めイドの名をもらったメイドが立っていた。



「ダゴン様が、ルーク様をお連れしろと」



 ふむ。何でしょう? ダゴン様との話は機密事項が多いので、みんなを連れていけない。かと言って待たせる訳にもいかないので、リンネ達に明日の朝、イノセントハーツの砦に居るように言って別れた。


 デルタは護衛として来てもらうので、にゃんこ共にニーニャと降魔神殿に帰るように言ったら、ニーニャが難しい顔をしたのでにゃんこ共だけ帰るように言っておいた。



「おや? 猫姫ちゃん、いらっしゃい」


「あーい!」


「ん? 何かな?」



 ニーニャはダゴン様にアメ玉ポーションを差し出し、ダゴン様も心得たようにお口でアメ玉を受け取った。と言う事はニーニャには、ダゴン様が疲れているように見えたんだな?



「いやー。運動の後の糖分は最高だね」


「……ポッ」



 メイさんや、今のポッってのはなんだ、顔も赤いし身をクネクネさせて……まさか、そうなのか、そうなんだな! ニーニャの前でそんな卑猥なジョークを言ったんですね。ダゴン様は!



「嫌だなー。ルークくんジョークだよ。ジョーク。そんな怖い顔しないで。猫姫ちゃんにジュースとお菓子を用意しておいたからね」



 しておいた? 来るのがわかっていた? どこから見ていたんだ。やはり侮れないな。この人は。


 テーブルについて淹れてもらったお茶を飲む。ニーニャはイドに任せた。



「昨夜は大変だったみたいだね」



 流石に情報収集能力が凄い。既に知られている……。



「良い訓練になりました。実践に勝る訓練はありません」


「自称魔王も形無しだね。あれを訓練呼ばわりされされるなんて」


「奴らは全てさくらに帰順しました。元の鞘に戻った、と言う方があってますかね」


「ふむ。しかし、今回の件は注目を集め過ぎたようだよ。多くの密偵が監視していたようだ。余計なお世話かも知れないが私の方でもコマンダーくんを手伝って、少しばかり差っ引いておいたけどね」


「ご配慮ありがとうございます。今回の件は情報操作として利用するつもりでした。良い意味で修正が入りましたが」


「第十三魔王がランツェと言う事かな?」



 はやっ! そこまで知ってるんですか……。うちの中にスパイでも居るんじゃないのか? あり得ないな、ならば盗聴器でも仕掛けられてるとか……更にあり得ない。



「第十三魔王の事は、ほとんど外に漏らしていません。今の所、知られているのはサハギン族位なものでしょうか」


「あそこなら心配要らないよ。王が死んだ事で魔王軍に戻る事もできず窮地に陥ったらしくてね。うちに恭順してきたよ。本当どの面下げてって感じだったね」


「魔王の元に帰ってないのですか……。魔王クラークは誰と戦ったと思っているのでしょう? ダゴン様か、或いは海竜王辺りとでも思っているのでしょうか?」


「海竜王派と思ってるよ。昨日話した海竜王派の一派がクラークに接近しているからね。なにを考えているやら……。もうすぐ海竜王が目覚めると言うのにね」


「ですが、これで最後の不安が払拭できました。これでランツェを第十三魔王の影武者にできます」


「成程ね。ルークくん、面白い事考えたね。マイハニーの為かな。そんな君にさっき仕入れた情報をあげようと思って呼んだんだよ」



 なんでしょうね。聞きたいような、聞きたくないような……。


 ニーニャはお菓子を食べて満足したのか、イドに抱っこされたまま寝てしまったようだ。



「ゾディアックの連中は、標的を第十三魔王にしたみたいだよ」


「はぁ~?」



 ゾディアックは近々おこなわれる謁見式の日に、自称魔王の存在を明かすつもりだったようだが、昨日の事で急遽、第十三魔王を新たな標的にする事に変更したそうだ。


 賭け事は向こう見ずが外れる……もとい、当事は向うから外れるってやつだな。ゾディアックは第十三魔王が居て助かったんじゃないのか? この情報はクラン関係に流した方が良さそうだ。明らかに利用する気だ。ならば、こちらもゾディアックを利用するだけの事。只で利用させるつもりはない。



「ルークくんはこの事をどう捉えるかな」


「まさかとは思っていましたが、ゾディアック一族は他の魔王と繋がっていますね」


「アハハ……。ならば僕から言う事は無いようだね」


「いずれ、北方の地は我々が貰います。異存はございますか?」


「ないよ。でも北は面倒だよ。竜族が煩い地だからね。今の魔王のように魔王のネームバリューを全面に出すならいざ知らず……ねっ」


「すぐに手に入れる訳ではありません。それなりの策をろうしてからです。丸々太ったところを美味しく頂くつもりですよ」


「ほう。お手並み拝見といこうかな」


「フッフッフ……」


「ワッハッハ……」



 笑い声にびっくりしたのか、ニーニャが起きてぐずってしまい、ご機嫌を取るのに苦労してしまった。


 その後は他愛もない酒談義をして降魔神殿に帰ったら、レイア達も戻って来ていた。


 ニーニャはすぐにレイアに抱きつきスリスリ始める。



「ニーニャはとっても楽しかったみたいですね」


「正直、なにが楽しいのかさっぱりだよ」


「みんなと一緒に居れたのが一番だと思います」


「そうか……」



 ニーニャと同い年位の友達が居ればな……。


 その為にもちょっと頑張ってみますか。


 部屋でメイド隊が投げるカリカリを、お口でキャッチしているにゃんこ共を集合させた。にゃんこ共は完全に手なずけされてるな。



「にゃんでござるにゃ」


「我々の手が必要かな」


「何でも言ってくださいですわ」


「……(コクコク)……」


「今夜、ケットシーの里に行こうと思うが、ミケかタマ案内を頼みたい」


「にゃんでミケとタマだけにゃ? みんなで行けば良いでござるにゃ」


「「「……(コクコク)……」」」


「今夜行くんだ。強行軍でな。チロは女性だから無理はさせられない、トラは体重制限があるので却下。残るのはミケとタマだ」


「きょ、強行軍にゃ……。ルークにゃんが言うならきっと半端ないにゃ……ござる」


「こ、ここは、リーダーであるミケに譲ろうじゃないか」


「にゃ、にゃに言ってるでござるにゃ! こんにゃ時だけリーダーにゃんてずるいにゃよ!」


「どっちでも良いから早く決めろよ。それから、行く方は夕飯食うなよ」


「にゃ、にゃんでにゃー?」


「自分の汚物まみれになりたいなら止めはしないぞ」


「「……」」


「ご愁傷さま……ですわ」


「……頑張れ」



 決まるまでに準備でもしますかね。


 オールに行ってドラゴントルーパー用意させないとな。



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