74 優雅高妙戻る

 アルファがご機嫌ナナメだ。昨日の午前様がいけなかったようだ。あれ? 言ってなかったっけ?


 朝食中も俺だけ扱いが酷い。


 レイアの前にはこんがりトースト、ハムエッグにサラダ、ミルクが置かれているのに対して、俺の前には焼いてない食パン一切れにハムが一枚載っていてコップはあるが中身は水。そして、何故か人参が一本置いてある。これはサラダのつもりか? だとしても皮くらい剥いてくれ……うさ子食べるか?


 おや? メールが届いた。ひなさんからだ。ルグージュに戻って来たみたいだ。ご苦労様。ちょっと迎えに行って来よう。みんなは食事続けてて良いぞ。


 ゲートを抜けると目の前にひなさん達が立っていた。



「お疲れでーす」


「久しぶりね」


「リアルじゃ数日前だけどな」


「だよねー」


「うさ子ちゃんはー」


「さくらー」



 プルミ、浅草のヒッピータイガーですか? あなたとまりゅりゅは、ぶれないねぇ。取り敢えず、またゲートで戻ってさくら達の部屋に移動する。



「レイアリーサと言います。レイアと呼んでください」


「ダ、ダイチと言います。趣味は音楽。ギターが得意です」


「ダイチはロリコンだから、レイアは安心して良いよ」


「ルーク! お、お前何言ってんだよ。俺はノーマルだ!」


「えっ! そうなの? 小五が好きだって言ってなかった?」


「言ってねぇーよ!」


「ロリコンってなんですか?」


「レイアさんは知らなくて良い事よ。耳が腐るわ。ひなさんです。よろしくね」


「コッコ。そっちの駄目男の妹だよ」


「ひなさん、さん? にコッコさんですね。さんは必要ありません。レイアと呼んでください」


「了解。レイア。私もひなさんで良いわ。名前変えた方が良いのかしら……

 」



 それならこんちゃんも一緒に変えれば良いんじゃないか? こんちゃんさんだし。



「うさ子ー、会いたかったぞー」



 うさ子とまりゅりゅが抱き合っている。平常運転のうさ子にしては珍しい光景だ。



「さくらちゅ~わん。これを見ろ! さくらちゅ~わんの為に取ってきた、アポンジの実だ!」



 さくらが目をキラキラさせている。これも珍しい光景だな。


 うさ子の分のアポンジもあると言う事で、アルファにお願いして切り分けて持って来るように言う。すぐに、みんなの前に皿が並べられてアポンジが取り分けられる。



「アルファさんは今日もお綺麗ですね。今度良かったらお茶しませんか?」



 ダイチが人形ドールを口説いている。ドールって知ってたよな? アルファは冷めた目のまま、軽くお辞儀をしただけだった。



「良い。凄く良い、ゾクゾクくるね。あの冷たい目で見られるとサイコーだよ」



 薮から棒に何言ってんだよ。そういう、性癖までもっていたのか、ロリでMって、どーなのよ。さくらとレイアに近づかないでほしい。



 配られたものを見るに、どうやらアルファはまだご機嫌が直ってないようだ。自分の皿のアポンジだけ、向こう側が透けて見える程薄い……みんなは普通の大きさで美味しそうに食べてるな。さくらなんか大はしゃぎ中、イチゴより好きなのかも。食べ終わって唯一残っている、わずか数ミリの厚さで皿の上に絶妙なバランスで載っている俺のアポンジの前を行ったり来たりしている。



「さくら食べても良いよ」



 さくらが満面の笑みでアポンジを食べようとした瞬間、まさかのアルファによる奪取。さくらがまさかのアルファの裏切り行為にフリーズしてしまった。


 アルファ、酷いぞそれは、と言おうとした時、さくらの前に先程の数倍厚いアポンジが出てきた。さくらがフリーズから立ち直り、アルファに小首をかしげて良いの? と言ったかわからないが



「どうぞ、お召し上がりくださいませ」



 そう言って、またアポンジが絶妙なバランスで載っている皿を俺の前に置く。こいつ俺に喧嘩売ってんのか?


 また、さくらが食べ終わると俺の前をウロウロし始める。お尻をフリフリして可愛い。そんなさくらを抱っこし、薄っぺらなアポンジをクルクル巻いて、アルファに見せつけるようにさくらに食べさせてあげた。


 アルファはハンカチを口に咥えキィーとしてる。ざまぁ!



「それで状況はどうなのよ」



【優雅高妙】の皆さんが王都に向かってからの事を話す。



「あの沖にあった島が迷宮だったのかよ。知らなかった……」


「王都に既に行ったって……どう言う事なのよ!」


「カジノやりてぇ」


「ペン太、色変わったんだー。わからなかったよー」


「クェー」


「さくらは可愛いなぁ。ほんとに可愛いなぁ」



 三者三様いや、五人だから五者五様かな。ふたり以外はどうでも良い内容だけどな。


 それより今重要なのはモンスターの氾濫の事。



「全員参加できるんだよね」


「私は午後しか講義ないから午前中は入れるよ」


「俺は逆に午後以降空いてる」


「兄貴と同じ」


「私はー、夜からかなー」


「私もだ」


「俺もも夜からになる」



 極力、モンスターを減らしたいので【優雅高妙】と合同で当たる事にした。


 今日はセイさん達と一度合流して、今後の事の話しを聞く。明日からはログインできる人とレイア達が組んでモンスターの討伐をおこなう事になる。


 そうなると、レイアと他のメンバーが連絡取れないと不便と言う事で、【優雅高妙】も降魔神殿にゲートで来れるように、設定をオメガに変えてもらった。



「向うの迷宮にも行けるようにすれば良いじゃん」


「駄目でーす。向こうは人魚族のテリトリーなので却下です」


「俺は人魚が見たい!」


「リゾートは良いかもね」


「海で泳ぎたーい」


「まりゅは泳げるのか?」


「イーリルには行けるようにはするから、我慢しなさい」


「「「「「えぇーえ!」」」」」


「取りあず、ルグージュの件が片がつく迄は忘れろ! レイアの気持ちも考えろよ」


「「「「「……」」」」」



 こいつら本当に遊ぶ事しか考えてない。困った奴らだ。自分もだけど。



「ごめんね。レイア。気を悪くしたでしょう」


「いえ。逆にみなさんが明るいおかげで、嫌な事を考えずに済みますので」


「……惚れた」


「レイアは健気じゃん」


「ごめんねー」


「私とした事がすまない」



 若干一名は後で必ずシメる。そう心に刻んだ。




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