33 アイドル!?

『infinity world』が始動してからまだ一年も経っていない。


 そんな中で、『infinity world』の根幹ともいえるグランドクエスト『12の魔王』を解放するだろうか? この世界の人間とほとんど接触していない魔王とどう繋がるのか?



「グランドクエストについては運営から説明あると思いますか?」


「どうだろうな? 無いと考えるべきじゃないかな」


「理由は?」


「このてのゲームの稼働はおよそ十年、普通グランドクエストが始まるのは五年経った位の時だろう」


「そうね。それまでは匂わす程度で少しづつ小出しに情報を出すのが普通じゃないかしら」


「だからこそ斬新なんじゃん! 他と同じことやってたら売れないじゃん」


「うさ子ちゃん、ぺん太抱っこしたいー」


「さくらはマシュマロみたいでちゅねー、たべちゃうぞー」



 我が覇道の前に敵は無しって奴が二人程居るな。



「それでオールは何がしたいんだ?」


「何とは?」


「いや何かあるだろう? そのヴァンパイア族を倒したいとか、追い返された魔王を見返してやりたいとか?」


「……」


「……」


「……」


「ないの?」


「……」


「もしかしてほんとに私怨だけ……?」


「……」


「「「……」」」



 マジっすか! なにこれ? イベント終了? 天のインフォはどうした?



「一つよいかのう?」


「なんだやっぱりあるんじゃん。おっちゃん、ビックリしたよ」


「え? ルークてオッサンなの?」


「そういえば、言葉使いが丁寧だった?」


「マジ!? 年下だからじゃなかったのかよ!」


「プレイヤーのリアルを詮索するのはマナー違反だよ」


「あのぅ……それでよいかのう?」



 オールが言うには、こちら側が何もしなくても向こうからやって来るだろうと。本来、居るはずのない13番目の魔王が出現すれば興味を持つなり敵視するなり、何かしら動き出すはずと。



「自分が他の魔王なら、邪神が痺れを切らし介入した。と考えるな」


「確かに十分考えられるな」


「兄貴? 十分考えられるって事は12の魔王も考える訳じゃん?」


「何が言いたいんだ? お前は」


「さくらが邪神の回し者って、考える事じゃん?」


「だろうな」


「そしたら皆どう思う?」



 そういうことか



「成程、それは面白くないな。下手したら12の魔王全てが敵になるか?」


「兄貴理解できた?」


「それってマジやばくねぇ!」



 12対1はきついな。だがこれは想定済だったみたいだし。



「それでオールはどうするつもりだったんだ?」


「……っもりであった」


「聞こえない」


「魔王様に……っもりであった」


「だーかーらー聞こえないよー」


「ま、魔王様にお任せするつもりであった!」


「てめぇ! もう一回死んでこいや! この腐れ死体野郎!」



 なんて事だ……開いた口が塞がらない。丸投げだな。ゼネコンだよ。プロパーなのか、それともお役人。死ねば良いのに。もう死んでるから無理か。



「どうしますかね? 事がさくらの事だけにほっとけないし」


「なんかさぁ俺達イベントのど真ん中にいなくね?」


「だね」


「回避は簡単よ。ルークとさくらを見捨てれば良いだけだし」


「鬼だ、鬼がいる。女だから鬼バァ……バッブシュ!」



 み、見事な左ストレート、世界狙えるぜ。二回目だな。最後まで言わせてくれない。



「誰も見捨てるって言ってないでしょう!」


「はい……」


「取り敢えず、情報ね。それが無いと始まらないわ」



 ごもっともです。姐御。



「なんか言った?」


「いえ何も……」



 ひょえー怖いっす。めっちゃ怖いっす。本物の鬼バァ……ごめんなさいもう言いません。はい。



「それでオールさん。どの位把握できてるのでしょうか?」


「どの位とは……」



 オール、お前なにビビってんだよ。おまえ進化する前レベル七十以上あっただろよ。俺達なんか瞬殺できたろうが。



「二百年もあったのですから、12の魔王についてはそれなりに、お調べになってますよね?」


「……」



 姐御、怖いっすよ。背後に般若が見えやすよ。いつの間に幻術なんて覚えたんでやんすか?



「オールさん?」


「調べておらん……」



 言っちゃたよこの人? いや、このアンデット? 死を覚悟した者の目をしてやがるぜ。



「ハァ……早急に調べる様に手のものを派遣して下さい」


「承知した……」


「この場所の防衛関係はどうなっていますか?」


「基本、アンデットは死なぬ。昨日入ったハンターに全体の十分の一のアンデットが消されたが、もともと過剰気味であったから丁度良くなったわ」



 それ、俺達だと思うな。あれだけやって十分の一ですか? どんだけいるのだよ。



「降魔神殿はどうですか?」


「べリアルを返還されたからのう。 我と弟子のリッチ五体だけじゃな」


「ここにハンターを呼ぶ意味はなんですか?」


「生者の持つ魔力じゃな」



 何をするにも魔力が必要らしく、アンデットは例外はあるものの生者に比べると極端に少ない。そこでハンターに来てもらう事で魔力を吸収しているらしい。


 生者は常時魔力を垂れ流している状態なので、全く異常は無く魔法を使う事でも魔力が溜まる。



「早急に降魔神殿の防衛力強化をして下さい。それからここへの移動手段をどうにかしないと……」


「防衛力強化も承知した。移動ならゲートを作ればよいかのう?」


「ゲートって、転移ゲートですか?」


「それ以外にあるのかのう? 勿論、限定はつけるがのう」



 おぉー、流石は腐ってもリッチキングだ。



「魔王様にうさ子殿、あるじ殿をキーとし。三人のうち誰かとおればこちら側のゲートが起動する様にすればよかろう?」


「良いですね。それなら何かあってもすぐ逃げ込めますね」



 魔法(時空)のスキルレベルも上がれば、もっと自由に転移できる様になるかもしれない。重点的にレベル上げしてみるか?



「問題はさくらちゃんね。ここに居るより外にいた方が気付かれ難いと思うのだけど、鑑定持ちに見られると不味いのよねー」


「そこ問題無いと思いますよ。オール試しにさくらを鑑定してみろ」


「さくら ♀ ラブリーキティ とあるのう? それ以外でてこんのう? これでも看破を持っとるんだが……何故じゃ?」


「さくらのスキルにアイドルの秘密ってのがあって、効果が社長とジャーマネ以外秘密です☆彡、神をもってしても見破れないとあります……」


「そ、そう。じゃあ、あ、安心ね……」


「社長とジャーマネって誰よ?」


「さくらちゃんアイドルなんだー」


「こんなにかわゆいのでちゅうから、とうぜんでちゅよねー」


「……」



 一名ついてこれない方が居る。


 自分も当事者じゃなければ同じだったと思うけどな。




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