チゲ鍋でご招待!です!

「こんだけあれば充分でしょ!」

「蘭……アンタってばどこに行くつもりしてるのよ……」


 麓寮に戻った蘭を玄関で待っていた私と美雨。そんな私たちの前に現れた蘭は、完全防備の防寒着に登山用のザックに杖?のようなものも持っている。まるでこれから氷山にでも上るんじゃないかとでも思うほどの格好だ。


「だって、かまくらってことは外で食べるんだよね?寒くて風邪なんてひいたら大変だしさ!」

「はぁ……まぁいいわ、行ってみればわかるしね」

「葵ちゃん、先輩には電話した?」

「うん、もう済ませたよ、大歓迎だってさ」


 ということで、柳先生が迎えに来てくれたのでそれに乗ってアパートに帰る。昨日この坂を歩いて登ったけれど、普通に歩くと一本道にも関わらず軽く一時間はかかるので、夜遅くなるかもしれない時は遠慮なく呼べと柳先生に言われている。


「あ、いつもすみません先生!」

「おう気にすんな、他の先生と違って部活で他にやること無いしな」

「あ、初めまして柳先生!一年A組の浅田蘭です!よ、よろしくお願いします!」

「車乗るくらいで大袈裟だな~、おっしさっさと乗れ、後ろの席もシートベルトしろよ」


 もう街の方はすっかり雪がなくなっているが、山道に入ってしばらく坂を上ると未だに雪がちらほら残っていて、さらに少し上ると、まるで冬のように積もっている。それでもいつも車を走らせている先生は、慣れたハンドルさばきでアパートに向かう。


「よし、着いたぞ、アタシはまだ仕事残ってるが、後で向かうからメシ残しとけよ」

「了解です、ありがとうございました」


 一旦アパートの私の部屋に荷物を置いた蘭は、その厚着のまま私たちとかまくらへ向かった。そして、かまくらに入った直後に彼女の表情は一変した。


「あ、あったかい……!?」

「だから言ったでしょ?そんなに着こまなくても大丈夫だって」

「あら~いらっしゃい~」

「はじめまして!かまくら部部長の雪野華だよ!」

「あ、はじめまして!」


 お互いに軽く挨拶を済ませると、私と美雨の間の隙間に蘭も座る。そこそこ身長が高い蘭だけれど、かなり細身なので間に入るのは苦じゃなさそうだ。お風呂でも思ったけれど、蘭って本当にスタイルが良いのよね。


「羨ましい……」

「ん?羨ましいって何が?」

「別に、ほら先輩二人が作ってくれた鍋食べてよ」


 今日はチゲ鍋。なにげにホウレンソウがオススメだったりする。そんで私は美雨の小皿に盛ってあげているのに、ホウレンソウをよけてホルモンばっかり食べている。


「美雨、ホウレンソウ嫌いなの?」

「う~ん嫌いじゃないけど、ホルモンが好きだからかな」

「野菜も食べなさいよ、おいしいんだから」


 蘭の小皿は持ってあげた肉も野菜も全部食べてる。やっぱり良い体系の維持はバランスの良い食事なのかな?でも私も普段から栄養のバランスは考えてるのになんでだろ?


「あ、まだ食べていいですか?」

「どんどん食べなよー!具材ならたくさんあるからねー!」

「いやぁどもども、普段からトレーニングばっかりで燃費悪いんですよね」


 そうか!私に足りなかったのは運動だ!でも……運動って疲れるしめんどくさいんだよなぁ……なんかいい方法無いかな?そんなことを考えながらポータブルテレビのチャンネルをいじっていると、なんだか面白そうなCMがやっていた。


『この粉末を混ぜるだけで食物繊維がキャベツ三個分!』

「これだ!」

「あら~葵ちゃんどうかしたの~?」


 私はテレビで流れているCMの健康食品的なやつを見て思った。これを毎日使えばお通じは良くなるし太らないのでは?もしかしたら手っ取り早くダイエットが出来るかもしれない!


「どうせ続かないでしょ」

「なっ!やってやるわ!見てなさいよね!もしもしCMで見たんですけど……」


 すぐにスマホで電話をかけて注文する。届くのは明後日だそうだ。見てなさいよ、私が本気を出したらすごいんだから!

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