幕間 私の声が聞こえますか?

 落ちていく――



 君は覚えていないかもしれない。

 目覚めれば、何のことかすら分からないだろう。


 それでも聞いて欲しい。

 耳を傾けていて欲しい。


 私たちの時間軸からして、10年前。

 君たちからは10年後。



 世界が壊した。


 誰かが反逆し、焼き払ったから。



 能力か。装置か。

 ともかく、その誰かは、時間を逆行する術を持っていた様だった。

私たちがそれに着想するより早く、手にしていた様だった。


 私たちより何百倍も優れた存在。

 私たちがそれを止める為には、その誰かが術を手にする前へと

――時間を戻す必要があったのだ。


 どうか怒らないでいて欲しい。


 君を巻き込むのも、必要な事だったから。


 その誰かは、どうやら、君の死に関係していた。

 そう。だから、君を助ける事こそが、世界を救う鍵となっていた。


 論理の飛躍と取られても仕方が無い。

 だが、君が死んだその日から、世界は少しずつ歪んでいった。

それは確かな事だった。


 間近で見ていた私が言うのだ。

 間違いない。


 君が死んで、世界は色を失った。

 君が死んで、謎は解かれず眠った。

 

 だから、私たちは――いや、私は君を生き返らせる事にした。

 死後の君の脳から意識を取り出し、過去の君に繋いだ。

死体からのタイムリープは初めてだったが、成功したから良しとしてくれよ。


 それと、私が死んでいただろうが、気にしないでくれるとありがたい。

 肉体は所詮、入れ物に過ぎず、もはや私はただの意識でしか無い。


 私は君を導くための幻影。

 人工的な意識。


 別れを惜しむのもムダだ。


 「どうせ、すぐに会えるのだから」

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