暗雲編
十九話 風はどこへと吹いていますか?
衝撃的セリフから15秒間。
僕は天使と目を合わせ、しばらく黙る。
「……それで、何を見ているんだ」
「知らなかったのかい? 君を見ているんだ」
憎き人外との下らないやり取りの裏、無理くり頭を動かす。
天使は何を言ったか。
まとめると、要点は多分三つ。
1、琴葉の死は、僕の言動か、行動の変化による事象。
2、僕の言動か、行動の変化は、タイムトラベルによる影響。そして、これは微細な変化ゆえ、僕自身に自覚がない。
3、琴葉が殺されたことは、僕が殺されることに関係する事象。
「3が、どう考えても重要だよ」
僕の思考に、何食わぬ顔で入って来る天使。
会話で天使の注意が逸らせるかとも思ったけど、失敗。
「……琴葉の事件が僕の事件に関係するってことなら、琴葉の事件の犯人も僕の事件の犯人と関係しているってことだ」
二つの事件の犯人が関係している。
二人の犯人が関係している。
同一グループに属する共犯関係。
あるいは、同一人物という事。
「無論、そうなるね」
そうハッキリ言う天使。
決まりだ。
共犯関係か、同一人物。
この
あとは、どちらなのかも、ハッキリしてくれれば万々歳。
「それじゃ、そいつを捕まえたら事件は終わりってことだ」
だから、謎解きが簡単になる。
「それはどうだろうね」
後ずさりしながら、天使はまた笑う。
「……私をハメるつもりだったろ?」
バレていたか。
共犯か、同一人物。
犯人が二人以上いたのかどうか、の二択問題。
僕はこの答えをハッキリするため、天使の言葉から確証を得ようとした。
犯人が共犯関係、二人以上の組なら、そいつ一人が捕まっても事件は終わらない。
犯人が一人、連続殺人犯なら、そいつが捕まれば事件は終わる。
「……それは、ピンク色の意味の“ハメる”か?」
僕の投げた、いかにも頭の悪いセリフに天使はきょとんとする。
これで少しは、天使も僕を見くびってくれるだろうか。
思考を覗くほどでも無い、つまらない奴と思われておきたい。
そうなったら、僕の推理を先に見通される危険も少なくなる。
「……ふふ、君は本当にバカだな」
期待通りのセリフを吐き、天使が窓際へ下がる。
二歩、三歩。
意外にも効果があったのか。
なかば驚く僕へ、彼女の背後より風に流れ、花の匂い。
「バカのフリなんかして、そんな所がどうしようもなく大バカだ」
天使は、確かに僕を見くびっていた。
ただし、僕の狙いとは別方向に。
「素直に私を責めればいいのに。お前が僕を生き返らせなければ――って」
突如大きな音がして、掻き消える天使の声。
「……時間切れ」
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