南場花月 ⑬

『あなたは恩を返し終えました』


 その吉報は、花月の相談に乗ったその日の夕方に届いた。何ともあっけなく、怨返しの呪いの魔の手から一時的に解放された。


 花月は、梨香をボランティア部に残留させることができたのか。その結末はわからない。が、末治から届いたメッセージを見る限り、彼女たちは納得のいく答えを出せたのだろう。


 南場花月の相談に乗り、恩を返したことで、怨返しの呪いを終わらすことができた。メッセージが届いた翌日からは、理不尽な不幸に遭うことはなくなった。イスが壊れたり、電車で寝落ちするような日常とはおさらばだ。


 さて。俺は今回の呪いの件で、ある決心をした。


 末治がかけた怨返しの呪いは、紛れもなく本物だ。あの男と出会った当初は、そのオカルト的な存在に対し半信半疑だったが、今は実在すると言い切れる。他の誰でもない、自分の身体で体験したから。


 だから、俺に怨返しの呪いをかけた依頼者を、探し出すことに決めた。いくら周囲の人間と距離を取っているからといって、花月のようなイレギュラーがまたいつ現れるかわからない。根本的な原因を排除しない限り、人から恩を受けることに怯えながら毎日を過ごさなければならない。そんなのはまっぴらだ。


 俺に何の怨みがあって、人との繋がりを絶つような呪いをかけたのか。皆目かいもく、見当がつかない。だが、見つけ出す。そして、安寧した日々を送るために、呪いを解かせる。

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