南場花月 ⑫
長い沈黙が訪れた。花月は俯いたままで、
言い方がまずかったかな。自分では気をつけたつもりだが、説教くさく捉えられたかもしれない。
無反応の花月に何か声をかけようとしたところ、彼女はそっと顔を上げた。俺が思っていた表情と、全く異なるもので。
「あなたに相談できてよかった」
俺は目を疑った。俺の予想に反し、彼女は心が満ち足りたように微笑んでいたから。花月の中でどういった心の整理がされたのだろう。俺は信じられない現象を目の当たりにしている気分だった。
「公大に言われた通り、梨香の話をしっかり聞いてみる。自分が良かれと思ってしてきたことが、もしかしたら裏目に出てたかもしれないし」
「まぁ、そうした方がいいと思うけど……」
「どうしたの? 珍しいものを見たような顔して」
「いや、あまりにもすんなり俺の話が受け入れられたから……少し戸惑ってる」
素直というか、寛容というか、お人好しというか。オブラートに包んだとはいえ、花月がこれまでやってきたことを批判したのに、反発はないのだろうか。こんな冴えない男から、わかったような口を利かれて。
「何で公大が戸惑うことがあるの? 私に正しい指摘をしてくれたのに」
「友達の立場になって考えてみればって言っただけで、正しいかどうかはわからない」
「私にはそれができなかったから。梨香を止める方法ばかり考えて、話し合いなんてろくにしなかった。ありがとう、アドバイスをくれて」
「あぁ、うん……」
本人がそれで納得しているならそれでいいか。口論にならなくて助かった。花月が
「梨香のことが上手くいったら、また公大に言うね」
上手くいく根拠など何もない。今更、梨香の真意を
しかし、なぜだろう。
隣にいる彼女が言うと、明るい未来が待っているような気がした。
失敗を恐れない彼女の姿勢が、眩しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます