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リヌクは、遠い記憶を思い起こしていた。「パドス。お前に地図を見せたのは覚えているな?」



「う……」パドスは返答に困った。



「向こう側の大陸は、魔の国だ。私は行ったことはないが、魔の国に一番近い、この大陸の北西部の港を歩き回っていたときに、同じ鳥に会った。そいつは、私が焚き火をしていたら急に飛んできて、その火を足で踏み消したのだ。そういえば、そのときも一羽だけだったな」



「火を消しただけ?」



「いや。やたらと口うるさいやつで、火を消した後も、さんざんいやみを言われた覚えがある」



パドスは、ウォーターバードの羽を優しく撫でて、「人間によく似てるね」と言った。



「ウォーターバードについては、向うの大陸に行ったことのある商人からこんなことを聞いたことがある」リヌクは、商人から聞いたことを話し始めた。「昔、この人間に似た鳥は、同じ種族の中で争いを始めた。その戦争で、こいつらが使ったのが火だ。巣を燃やすのに都合がよかったのだろう。その戦いのなかで、火をつける役割を担い攻撃を得意とするファイヤーバード。それから、その火を消す役割を担い、防衛能力に優れたウォーターバードが誕生した。やがて、その戦争により、この種族は互いに殺し合い、絶滅寸前まで追いやられていったという話だ」



話が終わると、リヌクは立ち上がって、ウォーターバードを見た。いつの間にか、ウォーターバードの目はパッチリと開いている。



「あっ!」と、思わずリヌクは叫んだ。

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