35

次の日、紫がかった雲は、昨日よりも幾分薄くなっているようだった。



これは、魔力の影響が少しだけ弱まっていることを意味していた。



リヌクとパドスは、昨日と同じようにラバとともに街に向かって歩いていた。



リルも、パドスの背中に両前足を引っ掛けてしがみついている。



こんな変な体勢でしがみついているので、リルは途中で何度も力尽きて地面に転げ落ちた。



それでも飽きずに何度もしがみつくのである。



しかし、午後になると、さすがに力も限界に達したのか、リルは石になったおじいさんと一緒に荷車に乗ってしまった。



リヌクは、一歩一歩足を踏みしめて道を進んでいたが、途中で急に立ち止まった。



そのとき、風がヒューと駆け抜けていく。



「なにかがおかしい」リヌクは、辺りをしばらく見回したが、特に異変もなかったので再び歩き出した。



それから、数時間歩き続け、ふたたびリヌクは足を止めた。



それは、谷の岩場を通り抜けていたときだった。



「やはりおかしい……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る