The S.A.S.【8-2】
「続きは私からお話しします」
トラウマの片鱗を覗かせるショーンに代わり、ブリジットが一枚の書類を寄越す。A4のコピー用紙に、写真が印刷されている。コーヒー豆の麻袋と一緒に横たわる、二つの死体。自分の目許が痙攣するのが分かる。写りは悪いが、赤黒い銃創がはっきり視認出来る。割り切ったとはいえ、恋人が作った死体に自責が湧く。
「負傷者への処置の最中に、埠頭を横切る人影を捉えたんです。遠くて識別出来ませんでしたが、味方とは思えませんでした。勘でしかありませんでしたが、放ってはおけませんでした。ヒルバート様から授かった任を抜け出し、彼らを追いました。
コンテナの間を縫って影を追っていると、サプレッサーを通した銃声が聞こえました」
それからブリジットは逡巡し、埠頭の俯瞰写真を指でなぞった。月明かりを頼り辿った経路に、整理を付けているらしい。
「銃声の主――ショーンのお義兄様を見付けた時、銃を手にした先程の二人と鉢合わせしました。まず近い方の敵へ三発撃って、それからもう一方に組み付いて、無心で引き鉄を絞りました。気付くと敵は喉から血を流して、背中から倒れていました」
表情を凍り付かせたまま言い終えると、ブリジットは物憂げな視線を投げた。
「以上が、本件の顛末です。事後処理は全て、お義父様が済ませてくれました」
違う。俺が聞きたかったのは、そんな事実確認ではない。「怖かった」と、その一言が欲しかった。泣いて、叫んで、助けを求め縋り付いて欲しかった。
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