第3部 第2話「暗闇の襲撃者④」

長く、くどい話がありますが、御許しを。

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1


「フラッシュ!」

その魔法でメイアンたちが怯む中、僕たちは先ほど見つけた岩の陰に、覚えている足の感覚だけで隠れた。

そして、5、6秒ほどでその眩しい光は消え失せ、瞼を閉じ、未だに光があると思い込み、立ち尽くしているメイアンの姿が伺えた。

光が消えたことに気が付いたのか、メイアンは目を開けた。

「……あれェ? どこに行ったんですかァ?」

そしてまた、狂気じみた口調でそう言い、辺りを2、3回見回す。

それと同時に妹たちも目を開け、同様、辺りを見回した。

そんな様子を、しばらく伺う。

……そして。

「よし、今だ!」

そう言って僕は双剣を、前後逆にして構え、駆け出した。

……え?

なんで前後逆かって?


彼女らは一応人ではある訳だ。

全く感情のないモンスターという訳でもあるまいし、説得すれば襲って来る事はないだろう。

故に、殺すことまでは出来ない。

でも今は、こいつらの頭が完全にイッてしまっているため、こうして気絶させておく方法しかないわけだ。

「ガツッ!」

まず一人目。

とりあえず、妹4人中の、妹Aとしておくか。

倒れる妹Aの体を腕で支え、ゆっくりと下ろす。

そして一瞬でまた隠れる。

「……エリー?」

なるほど。

妹Aアイツの名前、エリーっていうのか。

「あれー? エリーがやられちゃいました……。見えませんでしたねェ?」

メイアンがそんなことを言い、椅子に腰かける。

そして、

「……そうだ。さっき話すと言った、影魔族の歴史、お話ししますね。」

そのまま、語り始めた。


2


「まず……、今から100年位前ですかね? 私のお母さんのお母さんのお母さん……、ひいお祖母さんが、魔王に勇者を倒してこいと頼まれました。でも、ひいお祖母さんは病弱で、そんなことができる余裕は全くありませんでした。」

メイアンの妹たち四人……ではなく三人が、メイアンの座っている椅子の周りで、剣を構えた。

「そんなひいお祖母さんは、魔王に密かに恋心を抱いていました。普段ならレベル1の勇者にも負けてばかりのはずなひいお祖母さんが、レベル90の勇者にも、その恋心を持ってして、打ち勝ったんです。」

思わず聞き入るその話。

どんな悲しい理由でこのような状態に陥ったのか、どんどん疑問が湧いてくる。

「ひいお祖母さんは魔王に称えられました。そして魔王は、ひいお祖母さんにこう問い掛けました。『君は何が欲しい?』ひいお祖母さんは待っていたように、直ぐに『結婚してほしいです』と答えました。」

結末が近付いてくるのに気付き、少し俯く。

「数日後、ひいお祖母さんと魔王の結婚式が行われました。そして、その数年後には子供も産まれ、家庭はさらに暖かくなっていきました。……でもある日の事です。魔王城に、レベル100の勇者がやって来ました。その勇者はとても強く、城の手下たちをどんどんなぎ倒して行きました。……そしてやがて、魔王と、ひいお祖母さんのいる部屋へとたどり着きました。傷ひとつなく。」

つばを、飲み込む。

「魔王は、ひいお祖母さん、そして娘を置いて、テレポートしました。ひいお祖母さんを裏切ったんです。娘は運良く隠れられましたが、ひいお祖母さんは、魔王だと勘違いされ――……。」


「……――首を、一斬り。勇者はそのまま帰って行きました。その時、娘……。お祖母さんは怒りの感情を覚えたと言います。勇者。そして、魔王に。」

もう、

「だから、私は――」

聞いてられない。

「ガキンッ!」

僕は、聞いていられなくなり、メイアンに、そしてその妹たちに、剣の峰を振り下ろした。

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