第2部 第14話①「キングスライムキャッスル第一階層その①」
1
「……っあ~っ! やっと着いたあ~っ!」
クエスト場。
長距離を歩いたため、余りの疲れでその場に崩れ落ちる。
遅れてやって来た皆が、僕を見て言う。
「か、加賀谷くん、すごいわね……!」
「まあ、運動部……それも陸上だったしな。」
「戦う分の体力無くなっちゃったよ~っ!」
結衣奈は寝転がりながらそう言った
「あーもう! これ飲め!」
僕は結衣奈にそう言い、その瓶を渡した。
「何これ? 薬草ジュース? うわっ、クサッ! これ絶対偽物でしょ!」
「いやいや違うって! 僕も最初は偽物だと思ったよ! でもな、飲んでみたら本当にHPが回復したんだよ! あと何でかミント味だった!」
「もー。本当?」
結衣奈はそう言って、少し躊躇しながらその瓶の中身を……一気に口に含んだ。
「……はにほへ! ほいひい!(なにこれ!おいしい!)」
「ちょっ……!口に入れたまましゃべるな!」
そして飲み込んだ。
「でも、臭いのが嫌だ。何でこんなに葉っぱ臭いの?」
「そりゃあ、薬“草”ジュースだからだろ。」
「……はあ。臭くなければなあ。……ってかHPめっちゃ回復してる。」
「よし。回復したところで、クエスト開始しますか!」
「「「「うん!」」」」
2
今回はこの「キングスライムキャッスル」を掃除して、「キャッスル」に戻すクエストだ。
この建物は三階あり、搭のような感じの見た目である。
そしてまず最初に、一階にいるキングスライムを討没するわけだが……。
「……特に何も無いみたいね。」
キングスライムが居らず、どこを探しても見つからない。
「どうする? 二階に行く?」
「まあ、このまま敵が出るのを待っていても、時間が勿体ないしな。……行くか。」
少々警戒しながらも、階段に近付く。
そしてその右には、やや大きめの、たんすのような物が置いてある。
……あそこから出てきたりしないよな。
例えば、いきなり飛び出てきたり……。
とりあえず進むか。
「……加賀谷くん! 左!」
「は!?」
その瞬間、僕は頭にゼリー状の何かを被った。
「ぐぼぼぼ! がぐべべ!」
「あわわわ! ど、どうしたら!」
「ぐぐぎい!」
「そうだ! あの技で!」
そう言って、希里花さんはイリシアに何かを吹き込んだ。
「わ、分かりました。」
「それじゃあいくわよ。……
希里花さんが魔法を放つ。
「ウィズバブルアワー!」
続いてイリシアも、魔法を被せるようにして放った。
なる程。こんな使い方もあるのか。
僕の体の周りにだけ泡を出し、その泡でゼリー状の何かを僕の体から数cm浮かせる。
そして狙いを定めやすくし、そのゼリー状の何かに向け、希里花さんが更に魔法を放ったのだ。
「ふう。ふう。……ありがとう希里花さん。イリシア。」
「って加賀谷くん! また左!」
「おわっ!?」
安心できたと思ったらこれだ。
そう。みんなの想像通り。
一匹目のキングスライムが、姿を現した。
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