第2部 第8話「もう一人の吸血鬼」

1


「んもー。さっきからうるさいなー。」

「し、ししし、死体が喋ったああああ!」

その死体(?)は起き上がり、こう答えた。

「し、死体じゃねーよ。ボクはここで寝てただけ……って、誰だお前らーっ!」

「お前こそ誰だ!」

「ぼ、ボク? フッフッフッ。聞いて驚くな。ボクはだな……。次世代魔王、エパール・グリネア様だ!」

その瞬間、部屋のドアが開き。

「こぉンのアホ妹ーっ!」

と、ミールさんが勢い良くドアを開け、飛び出して来た。

そして手に持っていた、フライパン……のようなものを振り落とした。

「あだっ! なにすんだよ姉貴!」

……「あだっ!」位の痛さのレベルじゃない気が。

「『何すんだよ!』じゃないわよ! 魔王さまの前で、威張って『次世代魔王だ!』とか言うとかバカじゃないの!?」

「はあ!? どこに魔王(さま)が居るってんだよ!」

「あんたの目の前に今いる人よ!」

「はあ!?」

そしてそいつは希里花をジロジロと見て回り。

「マジだーッ!」

と言った。


2


「この度は、ウチの妹が大変ご迷惑をお掛けしました!」

ミールさんがそう言って頭を下げた。

すると当然のように希里花さんは、

「別に良いんですよ。まだ幼い子供ですし。」

と言った。

「え? グリはもう小6ですよ?」

「……へ!?」

しょ、小6!?

どう見てもそんな風には……。

「ねえねえ、魔王さま! “伝説の魔法”見せて!」

……見えないが。

「え? 伝説の魔法? あ、ああ。あれね。……でも、見る前に一旦外に出ましょ。……家が壊れてもダメでしょ?」

「はーい!」


3


黒煙纏いし炎風ダークフレイム・ウィンドストーム!!!」

希里花さんがその魔法を放つと、大きめの岩が粉砕した。

「うわあ! すごい、すごーいっ!」

……最初に見た時よりも、その魔法は威力が上がっていて……、ってまあ、それも当たり前か。

あの時から、3ヶ月も経ったんだからな。

「ええ。それじゃあこれは?捕まって! 無重力ゼロ・グラヴィティ!」

そしてグリが、希里花に掴まりながら、浮遊した。

「おおーっ!」


「ふぐぬぬ……。」

イリシアがグリを睨みながら、頬を膨らませて声を上げる。

「イリシア、どうしたんだ?」

「わ、私の立場が……。幼女キャラがああああ!」

「嫉妬か。」

「希里花お姉ちゃんは、私のなのに~~~っ!」

いやいや。それはない。

「つーかお前はグリと違って幼女ではあるけど、幼女キャラではないだろ。流石に。あと、希里花は好きとか思ってないと思うぞ。」

「はうっ! ……い、言いましたね?」

「? ……!?」

なになに! 怖い怖い怖い怖い!

「溺死させてやるです! 泡の舞いバブルアワー!」

「ぐわああああああ!」

……なんだ。この優しい感触。泡?

そういやバブルって言ってたな。

ところで、

「どこで覚えたんだ?」

「この前、泡スライムを倒した時に覚えたんです。……鼻に直接やってやりましょうか。」

「いや、やめろ! 風邪の人は鼻づまり直りそうだけど止めろ!」

「バブルアワー!」

「うわああああああ!」


4


「じゃあ、そろそろおいとまします。」

「あ、もうそんな時間でしたか。」

希里花さんとミールがそんな会話をする中。

「この度は、泊めてくださりどうもありがとうございました! あとついでに希里花お姉ちゃんのハートも奪ってくれてありがとうございました!」

「はーと?なになに? それって! ねえなに教えて!」

イリシアとグリは喧嘩していた……。

「あ、そうだ。行く前に。」

そう言ってミールは何かを胸ポケットから取りだし。

「これ、よかったら使ってください。」

……?

これって、どこかで見たことあるような……。

「村人たちが、レッドダイヤモンドストーンと呼んでいる石です。」

「……!!」


____________________________________________________________

第3部しゅーりょー!

ここまでが第3部。第4部は今日中にアップするつもりですので、少々おまち下さーい!

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