第2部 第3話「逃走」
1
とある森の中。
「はあ、はあ、はあ。」
僕は……僕は、僕は……
僕は……誰だ?
さっき、男の人に会ったんだ。
そしたら、いきなり口が疼きだして……
ガブリ。
気がついたら、その人の首筋に歯を突き立てて、血を飲んでいたんだ。
そしてその男の人は……
血を失って、死んだ。
僕は……僕は、一体……。
僕は……、一体何を……?
森がざわめきだし、木葉が舞い落ちる。
そして……、
「あっ! グリ! ここに居た!」
グリ……?
それが僕の名前なの?
「全く。魔王さまに、『夜以外に外に出るな』って、前から言われてるじゃない。」
その人はそう言って僕の手を掴む。
「あ……、あの……。」
「さっ。お家に帰りましょ。」
2
「どこか……、逃げる……所は……?」
マズイマズイマズイマズイマズイ!
あいつら……、馬使ってやがるから、めっちゃ速いんだ!
「くそ……何処か……何処か、逃げる所は無いのか……?」
そんな時、この町に来たばかりと思われる、横の店の中から出てきた少女たちの会話が耳に入る。
「――――ちゃーん!わたし、森にごはん落として来ちゃったみたいなの!」
「本当ですか!――――ちゃん!すぐにとって来ないと!」
森……?ここらに森が在るのか。
そんな少女たちからヒントを得て。森を探すことにした。
3
「――ってことで、森を探そう。」
僕は走りながら皆にそう告げた。
「ええ!? こんな状況で!?」
皆はそう言って顔を見上げた。
「大丈夫。森は広いから、奴らはそのうち道に迷って出られなくなるし、木も沢山あるから、いざというときに役に立つって。」
「そうだけどさぁー。」
と、希里花さんとイリシアが言った。
そこで結衣奈が。
「た、多分それなら私が見付けられるわ。」
と言った。
「げっ! 結衣奈!? ……なんで?」
「周囲探索魔法があるのよ。」
そう言い、結衣奈はポケットからそれを取り出す。
「あの……、結衣奈ちゃん。それって……。」
希里花さんが呆れた表情でそれを見る。
そんな希里花さんに対して、結衣奈は、
「そうよ地図よ! ……悪い!?」
と、怒った口調で言った。
「それどこで見つけたの?」
希里花さんがそう聞くと、結衣奈はそれに対し。
「さっきゴミ箱で。」
は?こいつ今なんてった? 完全にゴミ箱って単語が聞こえたんだけど。
え? マジ? それほんと?
「うわキッタねえ!それ捨てろよ!」
そんな僕の発言に対し、
「ヴッ……! 待って! 一応場所を調べられるんだし、もったいないわ!」
と言った。
? 「ヴッ……」ってなんだ?
「はあ。……分かった。……その代わり! 場所を調べ終わったら、さっさとそれ捨てろよ!」
僕がそう言うと、
「……はーい。」
そう、結衣奈は声のトーンを少し暗くして言った。
「で、森はどこにあるんだ?」
「ああ。……今、私達はここにいるから……!?」
「?」
「反対の方向よ!?」
「は!?」
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