12―5

「それで、その時見つけた花をここに…… クルトさんの友人の所に添えに来たんです。でもまさかザックさんが友人と関わりがあったなんて、不思議な縁ですね」


 ラーソは憂鬱な表情を浮かべていたが、すぐに明るく振る舞った。

 だが、この時のザックは、反対に表情を曇らせた。

 ……それもそのはず。なぜクルトが進化派の話をラーソにしたのか、疑問が生じたからである。ラーソもまた、当然のように進化派の名前を口にしている。

 答えは一つしか見いだせなかった。


「……察しの通り、わたくしもワンダラーですわ。ザックさん、あなたと同じく。彼らのことや彼らがして来た事も大体は知っています」

(やっぱり、か)


 ザックは、無理な笑いをラーソに見せる。

 遠くでは、子供達がじゃれあう声が聞こえていた――



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