第2ー33話 馬鹿と天才紙一重と言うけどアホはアホなのです。 

 第5ダンジョン部と丹澤慶子、そして小学生達と芝山先生は大通りのダンジョン近くにある光里ちゃんオススメのカフェに来ていた。フルーツタルトがメインのカフェのようでショーケースには様々なフルーツタルトがキラキラと輝いている。

「わ~!!キレイ!!」

 フェミちゃんはケースに張り付いてフルーツタルトに負けないくらい目を輝かせている。ガラスに指紋とか付けないようにね。磨くの大変なんだから…。

「これはまさに宝石箱や~!!」

 使い古された比喩を叫ぶタマを無視した一行は札幌の街を見渡せる見晴らしの良い席に座った。

「さて…マヨネーズを使ったタルトはどれかな?」

 そんなモノはない!!

「それならこのサーモンとキノコのタルトですね。」

 あるんかい!!

「私はベリータルト…う~ん…メロンも捨てがたいな…」

「じゃあ私がメロン頼むからシェアしようか?」

 迷うフェミちゃんにテレちゃんが提案する。楽しそうだな。

 思い思いに注文する高校生&小学生から少し離れた所に座っていた丹澤慶子と芝山がビールを飲んでいた。…芝山お前もか!!

「すみません気を使って頂いて…」

「気にしないで下さい芝山先生。あの子達が決めた事ですから。」

「生徒さん達を信頼してるんですね。」

 芝山よ…丹澤慶子は考えるのがめんどくさいだけだと思うぞ。

「うるさいわね。」

「丹澤先生?」

「ああ…何でもないです。それより光里ちゃんでしたっけ?凄い子ですね。」

 丹澤慶子が言うと芝山は少し困ったような顔をする。

「ええ、凄い子です。天才と言って間違いないですね…。」

「あまり嬉しそうじゃないですね?」

「……天才だから幸せってワケじゃないんですよ…。」

 芝山は困った顔から悲しそうな顔になる。

「そうなんですか?」

「彼女…光里ちゃんはごく普通の家庭に生まれたんです。天才ぶりは3才の頃から発揮されてましてね。ご両親はどう扱って良いか分からなかったみたいなんです。」

 芝山はビールを一口飲み、話を続ける。

「そんなご両親の気持ちが小さな光里ちゃんが分かるはずもなく、周りに褒めてもらえるからとどんどん色んなモノを吸収していったんですよ。彼女5か国語話せますし、あの年にして特許を20も持ってるんですよ。」

「そ…それは凄まじいですね。」

「その特許はかなりの収入になりまして…、それは彼女の父親が一生働いても稼げない金額だったんです。その結果どうなったと思います?」

「う~ん…。それを元手に会社を興したとか?」

「それなら良かったんですけど、父親が会社を辞めて遊び歩くようになったんです。そんな父親に嫌気がさした母親が離婚を決めまして…。収入が無くなっては困る父親はそれに応じなかったんです。」

「酷い父親ね。」

「ええ。まあ、結果としては離婚は成立して親権は母親に与えられたんですけど、それでもお金をせびりに父親が度々訪ねて来て騒ぐわ喚くわで同じ所に長くは居られなかったって話です。」

「ちょっとその父親の居場所教えてくれませんか?ぶっ飛ばしたいんで。」

 おい!!…と言いたいところだが分かるぞ丹澤慶子。

「それには及びません。裁判で父親が光里ちゃんや母親に近付くのは禁止されましたし…その…それもうやっちゃいましたし…」

 芝山殴ったのか!?え~と…許す!!

「そう…。あの年にして苦労してるのね。」

「ええ、本来なら海外で飛び級して大学出ててもおかしくない子なんですけど、彼女が求めたのは『普通』なんですよ。天才だったばかりに家族が壊れてしまったって思ってるのかもしれないですね。」

「何ともやりきれない話ですね…。」

「まあ、そんな中で塚地君には感謝してるんです。」

「塚地君ってあのクソガ…じゃなくって元気な子?」

「はい。塚地君はその…子供らしい?…と言うか、やんちゃ?と言うか…。」

 要するに『アホ』って事かな?

「言葉を選ばなければ『アホ』って事かしら?」

 言葉を選べ!!

「まあ…そうです。『普通』を求めた光里ちゃんですけど周りの目はそうは変わりませんからね。学校でも浮いた存在だったんです。そんな中で塚地君だけは関係なく話し掛けて光里ちゃんと友達になったんです。それから周りの子達も光里ちゃんと遊ぶようになって今に至るって感じですね。」

「まあ、無理に普通にならなくても居場所を見付けられたって事かしらね。今の彼女はとても楽しそう。」

 2人は満面の笑みの光里ちゃんを見て微笑む。

「私思うんです。もしかして塚地君はおバカを演じてるんじゃないかって。彼、勉強は意外と出来るんですよ。たまにこっちがドキッとする本質をついた事言ったりしますからね。」

「ああ、ウチにも…ってその子は勉強はあまり出来ないですけど似たようなのがいますよ。『馬鹿と天才紙一重』なんて言いますけど彼らもある意味『天才』の部類に入るのかもしれないですね。」

 しんみりとした2人の耳に元気な塚地の声が聞こえてくる。

「見てみろ玉乃井!!メロンソーダにカフェオレを混ぜた新しい飲み物を開発したぜ!!」

「何を!!俺なんかコーラにカ○ピスを入れてマヨネーズをトッピングしてやったぜ!ハハハハ…!!この勝負俺の勝ちだな!!」

「どうでも良いですけど玉乃井さんも塚地君も絶対に飲んで下さいね。飲食物で遊んで残したら許しませんよ。」

「「は…はい……。」」

「芝山先生……、やっぱりアホはアホだと思うんですけど……」

「そ…そう…ですね…。」


 子供の才能を伸ばすも殺すも親次第って所があるよね。作者もこんなアホな物語書いてるけど結構口煩い親父なんだよね~。反省しよう。それでもウチの子がまともで良い子に育っているのは常識人である嫁のおかげだ!俺だけで育てたらそりゃもう誰もが認める奇人に育った事であろう…ありがとう嫁!!


 …と言うワケで次回!!小樽のダンジョンとサボる丹澤慶子!!……つづく!!


 


 

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那須野ヶ原高校第5ダンジョン部はじめました。 ポムサイ @pomusai

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