第42話 部長の資質なのです。

「……以上が6班の報告です。」

 ホテルの会議室、第1ダンジョン部が今日の報告を班別に報告していた。最後の6班がそれを終えたところだ。

 第1ダンジョン部は高レベルのスピード系職業を各班に配置し畳み掛ける方法でプラチナモフモフを倒していたようだ。職業、レベルも去ることながら部員一人一人の身体能力の高さが成せる業だ。もちろんタマのレアモンスタースキルはないので1、2体倒すのが精一杯のようだ。

「はい。ご苦労様でした。成果は上々ね。じゃあ…第5ダンジョン部の報告を聞きましょうか。」

 鈴木会長がフェミちゃんに振るがフェミちゃんは上の空だ。

「ちょっとフェミちゃん…。」

 メガネがフェミちゃんをつつく。

「え?あっごめん。何?」

 全く聞こえていなかったらしい。

「俺が報告するぜい!!」

 タマが勢いよく立つ。大丈夫か?

「午前中は海で殴られて悪霊とアンデットがモハーって活躍して3体プラチナモフモフを倒しました!!あっ、1体はマー君の中に入ったのをハンクスがドーンってやりました。」

 内容はメチャクチャだが3体倒した事に周りがざわつく。

「3体は凄いわね。内容は伝わらないけど…。」

 鈴木会長も、もう第5ダンジョン部の驚異の活躍に驚きはしない。

「第1ダンジョン部も第5ダンジョン部に負けないよう、明日も頑張りましょう。入浴、夕食後、第1ダンジョン部はシミュレーションを行います。解散!!」


「さて、我々は夕食後どうしますかね?」

「……。」

「フェミちゃん?」

「あ…ごめん。聞いてなかった。」

 どうも様子がおかしい。

「フェミちゃん、体調でも悪いの?」

 メガネが心配そうにフェミちゃんの顔をのぞき込む。

「大丈夫だよ。あっ、これからどうするかって事かな?先生は…どこ行ったんだろうね。」

 そういえばホテルに帰って来てから丹澤慶子を誰も見ていない。

「飲み過ぎて部屋で寝てるんじゃないのか?生徒を放っておいてヒドイ先生だ。」

「おいタマ。夜の暗い海に沈められたいらしいな…。」

 タマがだらだらと冷や汗を流す。本当に懲りないな。

「あっ先生。何してたんですか?」

 ハンクスが丹澤慶子を見てホッとしたようだ。

「ん?これ買ってきたの。ご飯食べ終わったらみんなでやらない?」

 丹澤慶子の手には大量の花火が下げられている。なんか丹澤慶子だけ夏を満喫してないか?


 食後、第5ダンジョン部は真っ暗な砂浜に来ていた。もちろんホテルの人に花火をやっていい場所を確認してからだ。読み手のみんなも花火禁止の場所は意外と多いから気を付けようね。

「タマちゃん!!人に向けて花火しないの!!」

 ハンクスが叫ぶ。みんなも人に向けて花火しちゃダメだぞ。

「ちょっとタマ君!!打ち上げ花火は手に持ってやらないで!!」

 メガネが注意する。みんなも打ち上げ花火は手に持ってやっちゃダメだぞ。

「タマ…暗闇でヘビ花火やって何が楽しいんだ?」

 テレちゃんが聞く。みんなも暗闇でヘビ花火はやっちゃ…いや、やってもいいけどつまらないぞ。


「フェミちゃん、なんか元気ないね。やっぱり体調悪いのかな?」

 メガネがみんなの輪から少し離れた所で線香花火をしていたフェミちゃんに近付き声をかける。

「ん?いや、本当に大丈夫だよ。ただ、ちょっとね。」

「僕で良ければ聞かせてくれないかな?フェミちゃん真面目だから何か抱え込んじゃってるんじゃないの?」

「あはは…。メガネ君に真面目って言われると思わなかったな~。」

 君も充分真面目だよフェミちゃん。

「…そだね。メガネ君になら話してみようかな。」

 そう言うとフェミは隣に座るようメガネに促した。

「…私って部長としてちゃんとやれてるのかな…?」

 少し間を置いてフェミちゃんは呟くように言った。

「何でそう思うの?」

「私、誰でも思い付くような作戦しか考えられないって事に気が付いちゃったんだよね。

 メガネ君のダンジョンへの知識は私をもう越えてるし、テレちゃんの頭の良さは言うまでもないでしょ?今日の作戦だって最初私分からなかったもん。」

「そうか…。」

 メガネは一呼吸置き続ける。

「作戦考えるのが部長である必要はないと思うんだよね。」

「え?」

 その時、バン!!と大きな音がしてタマが燃えている。

「タマ君燃えてるね。」

「うん。燃えてるね。」

「…で、どういう事?」

 え?タマはいいの?

「う~ん。三国志でさ劉備がいるじゃない?」

「うん。」

「…で、軍師に諸葛亮がいて、作戦を立てるのは諸葛亮なんだよ。まあ、家柄とか何とかはあるけど、諸葛亮は作戦が立てられるからって劉備と取って替わるって事はしないでしょ?」

「でも劉備の死後は実質大将だったよね。」

「それは置いておこうよ。」

 二人は笑う。タマは海に入り鎮火したようだ。

「例えば僕が部長になったとして、フェミちゃんみたいにみんなをまとめる事は出来ないと思うんだ。タマ君が僕の言う事聞くとも思えないしね。

 フェミちゃんなら部長に相応しいって見抜いて丹澤先生も指名したんだよ。その判断は間違ってなかったって僕は思ってる。」

「そうかな…。」

「そうだよ。」

「第5ダンジョン部の諸葛亮先生の事、信じてみようかな。」

「僕は第5ダンジョン部の劉備閣下について行くよ。」

 二人は笑い、みんなの輪に戻って行った。


「タマ君、さっき何で燃えてたの?」

「いや、花火を20個いっぺんに着けたら爆発してさ。服が燃えたんで丹澤先生が飲んでた水かけたら燃え上がったんだよ。」

「あれはウォッカよ。」

 みんなも花火は一つずつ、そして燃えた物にウォッカをかけるのは止めようね。………つづく!!


 

 


 

 

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