【追加記事】伝統の分野

 どんな業界でも、伝統の分野と新規のニューウェーブというべき分野とが併設状態で並んでいるものでして、だいたい権威化されて高尚とか品質とか言われるのは前者の伝統分野です。新規分野はまずお作法がないですから。


 小説界ですと、前者の代表格は「文学」ですかね。まぁ、40年も過ぎればお作法が確立されて評論が成り立つようになり、評論が成ればランク分けも可能になる、という感じですわ。文学の他、ミステリ、SF、児童書なんかも前者。


 これ、ミステリを例にすると解説しやすいですが、登場当時は現代のラノベとまったく同じで、論外とか小説じゃないとかボロカスでした。そして、当時の状況がどうだったかは現代の我々には窺い知れません、なんせ淘汰されて何も残っとりませんので。ごく一部のほんとのトップレベルしか残っておらず、他はぜんぶ消え果てたので、現代ではこの残った上澄みを基準にした新しい尺度でもってその界隈は測られております。


 同じことがライトノベルという新規ジャンルにおいても、40年後をみればトップレベルに出来の良いごく一部を残してそれより劣る作品群は完全に消滅し、この上澄みの平均レベルをもってライトノベルの合格ラインが形成されるでしょう。


 そこで求められる合否判定ラインは、現代、文学やミステリ、SFなどで言われるものと同じに、そのジャンル特有の条件が整備されたものになると思います。そんで、現在のラノベと同じ位置付けでまた新規のカテゴリが生まれており、玉石混交で混沌とした状態のまま大盛況を託っておりますでしょう。


 いずれラノベも同じ道を辿るとはいえ、現状ではまだまだ混沌として出来不出来を分けるボーダーラインなども存在しませんので、これを、すでに合格ラインを擁している他のジャンル小説と同じには語れない、ということです。


 これ、定義や要素などが体系化されていき、評論が可能なほど整備されていく過程においての流れですんで、言ってみれば、不要な枝葉をバッサリやって盆栽らしく整形されたものが伝統のジャンルということになります。


 自然に任せたままの現状のラノベみたいなジャンルは、ここに入らないわけです。ラノベというカッチリした枠が作られ、そこからはみ出す作品はラノベのシールを剥がされるようになって、それで初めて伝統です。

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