【追加記事】本を読む時に気をつける事柄

 前の記事がちゃんと伝わったかほとほと自信がないですが、まぁ後でまた考えましょう、というわけで次の追加分です。


 小説は、いえ、文章というのは情報の伝達を目的とします。これは基本なので今さらですけども、校正の入っていない素人の作品などを読んでいると、そもそもでこの基本が出来てないと思われる作品が沢山あります。


 学校教育の弊害でしょうか、端的に纏められた概略の文章が驚くほど多いです。


 私もかつてはそれで問題なくやってたのでそれは普通なのかもしれません。書き手もざっくりと書けば、読み手もざっくりとで受け流して、ぼんやりとしたイメージの交換だけでも互いのコミュニケーションは成り立つわけですね。それです。


 しつこいほど書いてますが、「ゴブリン」と書けば、ぼんやりなイメージが読者と作者で共有されてしまうわけです。この延長状態で、何から何までぜんぶぼんやりで済ませてしまっている作品が多いのです。

 得てして、こういう作品を書いたり、満足して読めている読者というのは、そうでない作品とぼんやり作品との区別すら付けていないようでもあります。恐ろしいことに、読書経験豊富な人にすらそういう人が居る予感さえあります。区別がつかないなら、それは何千冊読んでいようが舌がバカなのと同じですよ。どちらのテイストも楽しめるということとは明らかに違うのです。ちゃんと区別つけられますか?


 読書をした時に、非常に丁寧に正確に情報を細かく伝達しようとしている文章というものと、情報そのものはざっくりにして他の、例えばテンポとか展開スピードを速めて読者の興奮度を上げる点を優先にしている文章というものなど、それぞれ書き手が選んだ書き方は目的に沿ったものであるはずですが、その区別がつくかどうかが大事になります。区別が付かない事柄を、自身が使いこなせるはずはないからです。


 ただ楽しく読めているだけでは多くのことを取りこぼしてしまうわけですね。


 さて、これも繰り返しになりますが、ざっくりしたイメージの伝達だけで通じる情報というのはそもそもで、相手もよく知っている、非常にポピュラーな事柄だけだ、という点をもう少し考えてみてください。ちょっとでもマイナーな情報だと、ざっくりした書き方では読者がピンとこない場合があるということです。なので、テンプレに例を見れば解かるように、既存のナニカをすぐ連想できるような書き方になっていきます。知れ渡った事柄だけに絞って書かざるを得ないので。


 すると、世の書籍の動きはこうなっていきます。


 まず、非常に丁寧に正確にコト細かく言及した書き方の書物が新規の情報の認知を広げていくのを待ってから、その同じ情報をコンパクトに纏めたおさらいのような書物が出ていく、ということです。

 ざっくりした書き方では、新規の目新しい情報になるほど、読者には伝わらないからです。その情報が知れ渡った頃にしか出番がないのがこの書き方になる、と覚えておいてください。シンプルで簡潔明瞭な文章とは、相手も知っている事柄を伝達するには非常に優れていますが、未知の事柄を伝達するにはまったく不足なのだということです。善くて相手を解かったような気にさせるに留まります。


 それを確認したい方は、市販の専門分野の書籍を読んでみてください。非常に内容の濃い、読み応えのある書籍は、ほとんどがしつこいほどに文章を重ねて解説を試みているはずです。未知を伝えるにはそれだけの文章量が必要なのです。


 すると、ひとつの事柄を言及するに多くの文章を割く、という書き方を取ることになります。くどい、と思われる危険が出てきます。これを回避するために工夫していくのがもうひとつの、「魅せる文章の書き方」ということになります。

 しつこくしつこくひとつの情報を何行にもかけて書いたとしても、巧い書き手ならば読ませます。そのためのテクニックもある、ということです。


 シンプルに簡潔明瞭な文章で、既存の情報だけを使って、物語全体でもって未知の何かを伝達するという手法になるか。


 最初から未知の何かを真正面に捉えて、言葉と文章を尽くして伝達するか。


 やり方は幾通りとありますが、文章を駆使するというくらいですからぼんやりな理解では覚束ないだろうなと心得ておいてください。

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