市販小説の文章はみな同じ規格(笑

 最近はとくに思うのですが、本屋にマーケティングへ行くじゃないですか、ジャンル違うとこを片っ端から売れてそうな本を開いて回るじゃないですか、なんというか、文体の<端折りレベル>がほぼ統一されてんのがビビりますね。(笑


 ラノベくらいよ、これがバラバラなの。まぁ、端からラノベで勝負する気は毛頭ないのでそっちはいいんですけども、一般文芸界隈のこの端折りレベルがほぼ同じってのは要注意です、描写主体で行きたい作者の皆様。


 こないだ、ついに『星降り山荘の殺人』を入手いたしましたんですが、この作品はちょっと癖のある文体で、その癖の部分でいちいちつっかえている自分に気付きまして、「ああ、これが没入できない感か…」と感慨深く。(笑

 さすがに三十年近く昔の名作ってだけあって、現代の統一規格じゃないのですね。作家先生ご本人が、直したい箇所多すぎるから投げるわ、て宣言してるし。


 まーね、新本格ミステリ界隈ってのは、なろうテンプレ界隈と同じくで、独自ワールドというか、隔絶された島宇宙なのでぜんぜん構わんのですけどね。根底を流れるスピリットも常識も他とは別と考えるべきなので。シロウトは黙っとれ案件。


 文体の癖だってほんの数十ページ、数万文字ほども読み込めばテンプレ同様に脳のお味噌は慣れちゃいますし。あれだね、パソコンに新しいデバイスドライバをインストールするだけのことよ~。新本格の真髄は推理なので、ストーリーとかは二の次だから文章の癖なんぞはどーでもいい。すぐ慣れる。(笑


 これ、この文体の癖、顕著なのは地の文でして、途中で切っちゃうのよね。体言止めなんて可愛いレベルでなく、ぶっちぎるの。たぶん試みなんだろうけども。これが地味にボディブローで効きます。

「~~~~」

 嵯峨島が云いかけるのを、岩岸が遮って、

「~~~~」


 こんな感じ。遮って、どうしたの!? という感じにカクンとなってしまって。一個や二個なら文章効果と思って流せるけども、これがとにかく頻出するので、癖なのか試みなのか当時の流行りかだろうなぁと。読みにくいです、先生! 慣れるまで大変だなぁなんて思いつつ、期待値ダダ上がりなんで読めてるけど、初見で実績とか知らなかったらソッ閉じ案件ですよ。読みにくいんだもん、て。


 これよ、これ。これこそが<端折りレベル>の著しい差異ね。私はこういう、途中でぶっちぎった地の文が主体になる文体てのを読み慣れてないの。

 途中からこれはさほど気にならなくなるんだけど、慣れるのを待ってまで読み続けてくれる読者なんていないから。私がこの作品を名著だと知ってるから、文章なんぞ問題にしなかったってだけなのよね。


 んで、市販の文芸系小説だと統一規格が出来かけているのは感じるって書いたんですが、この規格に嵌まっている文体だと情緒がちゃんと描けています。そんで、シロウトさんの文体の多くはこの情緒がほとんど出せていません。なんつーか、お仕事用の事務文書なのね。事務文書ってのはその仕事やってるから嫌々で読むよーな、味気ない文章ですわ。中身が面白いとか言われたってね、面白いと感じるまでの何ページかを読むのがすでに苦痛です、私、実は非常に短気っすよ。


 先に、実例を挙げてボディブロー案件をご紹介しましたけども、この事務文章ってのもなかなかに量を読まされるとキますね。じわじわきます、ダメージが。んで、面白いと思えるまでにギブアップするわけですね、黄金のノックアウトパターンです。


 小説の文章ってのは冗長なほうがまだマシなんです、整然とした事務文章よりは。これも最近はアマチュアのそういう作品に親しみすぎていて、解からんって人も多いですけど。刺身の切り方の違いほどの差異なので、気にしないならしないでいいですけどもね。描写をやりたい人にとっては大事なのです、これを次書きます。

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