367 瀬戸夏の結末 世界は確かに美しかった。

 あなたとの距離


 人は無意識に距離を計っているのもです。

 人との距離。恋愛のゴール。そして自分の人生の終着駅。それを決めたのはほかでもない、あなた自身なんですよ。

 私は考えます。

 それは私とあなたの距離。

 それって、どれくらい離れているんでしょうね。

 きっと星と星の間より離れてる。

 もうずっと昔にあったっきりで、私はあなたの顔も名前も忘れてしまいました。

 私がいけないんです。

 それはもちろんわかってます。

 でも、あなたにだって、少しは責任があるんですよ。

 こんなに私を夢中にさせておいて、あなたは私のことをほったらかし。

 ひどいと思いませんか?

 それとも、あなたはただ並ぶ列を間違ってしまっただけなんでしょうか?

 私のことをどう思っていますか?

 聞いてみたい。

 あなたの本心。

 本当の心。

 あなたはいつも私と反対のことをしていましたね。

 私が右を向けば、あなたは左を向いていました。

 私が空を見上げれば、あなたは大地を見つめていました。

 雨が降っています。

 私は傘もささずにその中で立ち尽くしています。

 あなたを待っているんです。

 もう私は一歩も歩くことはできません。

 迎えに来て欲しい。

 私は、あなたの笑顔が見たいんです。

 

 瀬戸夏の結末


 世界は確かに美しかった。 


 ……ここはどこだろう? そんな疑問とともに瀬戸夏は目を覚ました。そこは不思議なところだった。真っ白な空間が広がっている。空も大地も真っ白な世界。白くて冷たい床の上。そこに夏は一人で寝転んでいた。

 どう見ても遥の部屋じゃない。夏は立ち上がる。そして辺りを見渡した。なにもない。誰もいない。真っ白だ。遥がいない。遥はどこにいるんだろう? 夏は自分の右手を見つめる。そこには遥の手のぬくもりが残っている。夏は何度か右手を握ったり開いたりする。夏はとても冷静だった。思考はとても透明ですっきりとしている。あれだけ泣けば誰だってそうなる。いろんな悩みがあった。迷いがあった。それが夏の中に存在していない。(びっくりだ)問題自体はなにも解決していない。課題も残っている。それはそうだ。夏はただ大声で泣いただけなんだから、それで悩み自体が消え去るわけではない。

 そうではなく受け入れることができた。あっさりと受け止めることができた。なにが変わったんだろう? そもそも本当に変わっているのか? 自分では判断ができない。ただ、とても体が軽くなっている。背負っていた荷物がなくなっている。あの重たい荷物はどこに消えたのか? もしかしたらその辺に捨ててしまったのかも? (そうだったらちょっとだけ嬉しい)そう思って夏は少しだけ笑う。

 そうだ。捨ててしまえ。あんなもの背負い込む必要なんてないんだ。それよりも遥だ。遥を探さないと。どこにいるだろう? また思考にふけっているんだろうか? 空を見ているんだろうか? きっとそうだ。周りなんて気にしない。自分のやりたいことをやる。遥ならきっとそうする。

 夏は真っ白な世界の中を歩き始める。なんの根拠もなかったけれど、この先に遥がいることがわかる。

 瀬戸夏は友達に会うために真っ白な大地の上を駆け出していく。遥に会うんだ。遥に会って、手をつないで、一緒に並んで空を見るんだ。

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