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 ……もしそうなったら僕たちはここにどのくらい閉じ込められるのかな? と澪は思った。早く出たい。狭いところは嫌いだ。もっと広い場所に行きたい。(深海は諦めたけど、狭いシェルター室の中はあまり居心地のいいところではない)プログラムの空間の中だって、永遠の広さがあるわけではないのだ。(むしろ現実の世界よりもずっと狭いのだ)

 遥が来たらまずは最初にそれを確認しないといけない。食料はどのくらいだっけ? 確か二年分くらいだったかな? 資材は大丈夫として、エネルギーはどうなんだろう? 予備の電源があったはずだけど夏もいるしな。……夏、たくさん食べそうだし大丈夫かな? エネルギーも一人と二人じゃずいぶん違うだろうし……、(照子は別格だ。仮に遥がだめでも照子は大丈夫なように研究所のシェルター室の施設は設計、用意されている)それに水はどうなんだろう? 事故の影響で汚染されてたらやばいかもしれないな? いや、除染できるから地下水は大丈夫なんだっけ? (あれ? どっちだっけ?)……まいったな。もっとちゃんと避難訓練をやっておけばよかったよ。

 澪は頭の中でドームが封印されたあとの行動をあれこれと考えて、計算をする。(シェルター室は無音だが、おそらくは研究所内の至る場所で大音量で鳴っているであろう、警報が鳴り終わって)研究所の非常事態宣言が解除されてコントロールが元に戻ったら、まずは施設の全機能を再確認して汚染度をチェックする。外部との回線を復活させて連絡もとらないと……。遥への(正当な、事故を未然に防げなかった、予測できなかったことへの)言い訳も必要になる。仕事が山積みだ。台風の後片付けみたいにめんどくさい。(……本当にめんどくさいな)

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