292 君に会えてよかった。
君に会えてよかった。
とても大きな音が部屋じゅうに鳴り響いている。
瀬戸夏は目を覚ますと、あまりの異常事態に状況をうまくつかむことができないでいた。その状況はあまりに異常だった。あまりの異常事態に寝起きのぼんやりとした夏の頭ではその状況をうまく理解することができなかった。しかし激しい赤色の点滅と大きなベルの音により、夏の意識は目覚めてからすぐに、強制的にその意識を覚醒状態まで強引に引き上げられた。
夏はベットから飛び起きた。
「なに!? どうしたの!? なにがあったの!?」
薄暗い室内。照明は(夏の知ってる、見慣れた)白から赤に変わっている。警報音が大音量で鳴っている。目覚ましのベルにしては音が大きすぎる。どう考えても、……ただ事じゃない。
夏は隣で眠っているはずの遥を見る。
ベットの中に遥はいない。遥を探さないと。(反射的に夏は思う)
ベットから降りると足がふらついて夏はそのまま床の上に倒れこんでしまった。
「……いたい」まるで自分に言い聞かせるように夏は言う。
夏は床にぶつけた体の部分を手で優しくさすった。
なんだろう? 頭が痛い。(それに体にも少し力が入らない)とてもいい夢を見ていた気がする。(夢はすでに消えてしまった)それなのに頭痛がする。……なんだ、これは? いったいどういうことだろう?
いい夢を見たあとは決まって体の調子がいいのに……。いつもなら、もっと気持ちよく目覚めることができるのに……。(それなのに体の調子が悪い。まるでソフトのダウンロードに失敗したアンドロイドみたいにちぐはぐだ)
なんかへんだ。だいたい今は何時なんだろう? 夏は時刻を確認しようとする。でも点滅する赤色と大音量のベルの音に邪魔されてそれがうまくできない。
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