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 それから、(なにかに満足したのか)ようやく動き出した照子は、顔を上げて今度は自分の白くて綺麗な形をしていると遥に褒められた耳を再び遥の頭にあいた穴にくっつけた。それから照子は自分の顔を(耳を押し当てた距離のままで)ぐりぐりと強引に左右に動かした。すると垂れ下がった照子の真っ白な髪が真っ赤になった。それから今度は照子は遥の流した血を小さな両手ですくい上げるようにして、それを絵の具の赤色のように使って、自分の真っ白な手や足や体を隅から隅まで念入りに赤色で塗っていった。そうやって少しずつ全身を赤色に染めていって、照子の全身が(真っ赤な人というタイトルで呼べるような)一つの芸術作品のような見た目になるころには、照子の下にいる遥の体は、上にいる照子の氷のような体よりもさらに冷たくなっていた。照子は生気のないまるでロウソクのように(あるいは外に降る雪のように)白く、冷たくなった遥の顔を見る。

 照子が顔をあげる。

 照子の意思なのか、(それとも、いなくなった遥の意思なのか)天井に一つだけ、主役を照らす、舞台の上のスポットライトのように小さな照明が灯る。

 白い光の灯る天井を見つめながら、小さな声で一言だけ、満足そうな顔をして、照子はぽつりとつぶやいた。

「あったかい」


(次の瞬間、スポットライトの照明が自然に落ちた)

 

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