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 部屋の外に遥は出る。そのとき、一瞬だけ部屋の中の大きなディスプレイに目を向ける。ディスプレイに光はない。死んだように真っ暗な色をしている。闇とほとんど同化している。そこに白いクジラの姿はない。

 遥は静かに通路を歩く。明かりは天井から照らされる一つの小さな明かりだけだ。(天井の明かりは遥と一緒に移動している。それ以外の場所はすべて闇だ)

 歩きなれたはずの通路はどこかそっけない雰囲気を感じさせる。所有していたはずなのに。いつの間にか捕まっていた。あの子は誕生と同時に私の心を支配した。所有されていたのは私だ。一瞬であの子に魅了された。でもそれはあの子の意思ではない。あの子の罪ではないのだ。(あの子はただ必死に生きているだけだ。生きようとしているだけなのだ)

 あの子を生み出したのは私だから。これは私の罪。木戸遥が犯した罪。木戸遥が受けるべき罰。罪を犯したのも、罰を受けるのも、あの子ではないのだ。

 私の弱さが生み出してしまった偽りの命。罰せられるべきは私。むしろ私は今までずっとあの子に命を救われていたのだと思う。あの子が生まれなければ、あのとき、あの子と出会わなければ、私はもうずっと前に自らの命をたっていたのだろう。あの子が居たから私は今も生きている。それは本当のこと。間違いのない真実のこと。私はあの子に感謝をしている。私は今も、……あの子のことを愛している。

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