188

 ドームの外周が近づいてくるが、空の中に溶け込んでしまってドームの壁はまったく見えない。ガラスの壁はまるで迷彩機能でもあるように(実際のところ、本当にあるのかもしれない)姿を消してしまっている。

 そこにはただ灰色の空が広がっているだけだった。違和感がまったくないのはすごいと思うけど、ここまで違和感がないと、少し危険ではないだろうか? そりゃ飛行禁止区域にはなっているのだろうけど、なにかのトラブルやアクシデントによってこの場所に迷い込んだ飛行機とかヘリコプターとか、あと空を飛ぶ鳥とかが間違ってガラスの壁にぶつかったりはしないのだろうか? そういうこともあり得るのではないだろうか? あり得ると思う。

 安全面で遥がどんな方針をとっているのか気になる。遥は核ミサイルを撃たれても大丈夫と言っていたが、あれは本当のことなのだろうか? それとも、ただの冗談なのだろうか? シェルターに篭れば、核兵器の爆発したって救助が来るまで生き延びることができるという意味なんだろうけど、案外本当にドームは核ミサイルの爆発に耐えたりするのかもしれない。

 夏は徐々にそのペースを上げていく。風がとても気持ちいい。

「夏、あんまり遠くに行くと帰れなくなっちゃうよ?」久しぶりに澪が口を開く。

 そんなことはない。道はどこまでも続いている。だからどこまでだって行ける。ちゃんと帰ってくることだって、できる。

 だから、「大丈夫だよ」と夏は言う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る