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遥は甘いものが大好きだから、コンテナ室にあるコンテナの一つくらいは、お菓子で中がいっぱいなのかもしれない。そんな空想を夏はする。遥ならあり得る話だ。それは無駄な出費ではない。
遥はすぐに戻ってくる。その手には、おそらくチョコレートの入っている真っ白な四角い箱を持っている。遥は席に座ると箱を開ける。その箱の中には形の違う十二種類の小さなチョコレートが入っていた。
「とっておきなんだよ」遥は嬉しそうに話す。
確かにとっても美味しそうだ。高級品なのかな? 夏はデザートには結構うるさい。夏はすぐにその中の一つを手にとってつまみ食いをした。選んだ形はハートの形だった。
「おいしい! これどこで買ったの!?」
目を丸くして夏が言う。それはお世辞ではない。本当にそのチョコレートは美味しかった。
「私が作ったチョコだよ」遥は言う。
その言葉を聞いて、夏は再び目を丸くして驚いた。遥はそんな夏を見ながら、丸い形をしたチョコレートを選んで、それを食べた。
「遥が作ったの!? すごい! レシピは? どうやって作るの? 私も一緒に作りたい!」子供のようにはしゃぎながら夏は言う。
「あなた料理できないでしょ?」遥は言う。
「当たり前でしょ? 実家ではシェフを雇っているんだから」そんなことをしたらシェフが首になってしまう。
「あとで作ってもらうの」夏は笑う。それから星型のチョコレートを選んで食べる。星は夏の好きな形だった。
遥は月の形をしたチョコレートを口の中に放り込む。その顔は笑顔だ。月は遥の好きな形だった。
遥は学園に通っていたころから、(ううん。もしかしたらそれよりもずっと以前から)一人暮らしをしている。木戸遥に家族はいない。両親を亡くしてから、記録上は、ずっと一人で生きている。照子や澪に苗字や名前をつけるのも、遥が家族に憧れているからなのかもしれない。
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