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 目からウロコがぽろぽろと落ちた。なんでも自分ですることができる遥はとてもかっこいいと思った。遥に憧れている夏は今すぐにでもそれを真似したかった。夏は自立したかった。でもそれは絶対に夏にはできないことだった。夏がやりたいと言っても、瀬戸の家がそれを許してはくれないだろう。

 さらに遥は木戸研究所では照子の世話までしているのだ。仕事をしながら子育てや家事ができることは本当に尊敬に値する。夏は自分がかっこよく仕事をさばき、家ではしっかりと家事をする姿を空想してみた。うん。なかなかいい感じだ。夏は最後に残っていたお皿の上のブロッコリーを口の中に入れて、それを食べた。

「ごちそうさま」と夏は言った。

「お粗末様でした」と遥は言った。朝ごはんは綺麗に全部なくなった。

 遥は朝ごはんの後片付けをするために空っぽになった食器を持ってキッチンに移動した。その後ろから夏も遥に付いて行く。遥はそこで洗い物を始める。その様子を遥の隣で夏は観察する。昨日と同じ。でも昨日よりも二人の立っている場所は近い。二人の距離は確かに少しずつ近づいている。

「よくここがわかったね」遥が突然質問する。

「ふふふ。今まで生きてきて、私の思い通りにならなかったことは、一つもないのだよ」腰に両手を当てて、自信満々で夏が答える。その答えを聞いて遥は苦笑する。

 ご飯を食べて、お腹もあったまって、夏の気分はだいぶ良くなった。うん。いい感じだ。せっかくの遥と一緒の時間だ。落ち込んでいたんじゃもったいない。

「今日はなにをしようかな? 遥はどうせ仕事なんでしょ?」拗ねたように夏は言う。

「今日は仕事はしない。お休みの日だよ」遥は言う。その言葉はとても意外だった。夏は驚いてまじまじと遥の顔を見つめる。

「なに? 私にだってお休みの日くらいあるのよ」遥はそう言って、泡のついてる右手の人差し指で、夏の鼻の頭を突っついた。

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