68 12月25日 朝 世界で一番あなたが好き。

 12月25日 朝 世界で一番あなたが好き。


 体のあちこちが痛い。疲れもあまりとれていない。昨晩、夏は結局床の上で眠りについて、そのままその場所で目を覚ました。硬い床の上。毛布もない。遥もいない。暗く儚い夜。本当は遥と二人でふかふかのベットの中で楽しくて最高の夜を過ごす予定だったのに、……現実は本当にいつだって悲惨で残酷だ。椅子の上に丸くなって夏はぼんやりとそんなことを考えている。

 遥はキッチンで朝食の準備をしている。夏はそれを手伝わない。そんな気力は夏の中に残っていない。頭の中がぼんやりとして意識がはっきり目覚めない。おかしいな? 夏は思う。本来の夏は寝付きも目覚めもいい。いつもならすでに朝の身支度を終えて日課になっている早朝のランニングに出かけている時間だった。風を切り走る夏。なにもかもが美しい。生きてるって素晴らしい。汗と一緒に心が洗い流されるようだ。

 実は昨日、ドームについてから朝、緑色の草原の中をランニングすることを楽しみにしていた。地上で走るコースもだいたい決めていたのにショックだ。でも、さすがに今は走る気持ちになれない。なんだか頭が痛くなってきた。変なの。

 ドアが開いて遥が部屋の中に入ってきた。遥はトレイの上に手作りの朝食を乗せている。遥はテーブルの上にそれらを順番に置いていく。かりかりに焼いたトースト。コーンスープ。目玉焼き。色が違う二種類のウインナー。新鮮な温野菜のサラダ。バナナ。夏はそれらの名前を頭の中で読み上げながら、滑らかに動く遥の手とテーブルの上の光景をぼーっとしながら眺めていた。遥は真っ白なエプロンを取ると、コーヒーを二人分淹れて席に着く。

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