第33話 天使

 ゴブリンを倒し、俺達は、古代樹の森を目指し奥へと進んでいく。


 いよいよ攻略に挑戦だ!


 肝心な魔穴の場所は、エドワードとジークフリードが検討がつくと言っていた。


 このまま進みたいが、木々の隙間から注ぐ光も淡く染まり、夜が近いと知らせて来る。


「この辺りで野営にするぞ」

 少し開けた場所で、エドワードが宣言した。


 三回目ともなると、俺も慣れたもので、杖を振り、魔法で整地し、簡単な屋根付きの寝床をぱっぱと作る。


 次に手頃な大きさの枝を集め、そこにソレッと火を付ける。


 このたき火は、イフリートの加護のおかげで、一晩中、辺りを照らし、肌寒い夜を暖かくしてくれる。


 寝床良し、たき火良し、これで野営準備完了だ。


 あとは、うまい飯を待つだけ。


 やれやれと額の汗を拭っていると、心地良い風が吹き、

「あなたって、便利ね」

 とシルフィードが感心してくれた。


「ふふふ、感謝しなさいっ」

 腰に両手を当て踏ん反り返る。


「そうね、あと、これで料理が出来れば、良いお嫁さんになれるわよ」

「なっ……」

 お嫁さんだとぉ、なるか、シルフィードの馬鹿っ!


「気にするな」

 ポンと頭を叩き、エドワードは山菜スープを作り始めた。


「ソフィなら、立派になれるさ」

 道中狩った獲物の肉をさばきながら、ジークフリードが、お嫁さんになれると断言した。


 腰の高さで横に持つ杖が、くやしさでプルプルと震える。


「な、何を言ってるのよ、馬鹿っ!」

 くっそぉ〜っ!俺は、婿になるんだい!


「ねぇ〜、早くこっちに座ったら?」

 シルフィードが、ニタァと勧めてくるのは、エドワードの隣だった。


「シルフィーの馬鹿っ」

「もう素直じゃないんだから」


 ジークフリードに肩を寄せている彼女に対して、ツンと首を横に振り、少し離れたチビとレティーシアの間に割って入った。


 その時、レティーシアがビックリして譲るような素振りを見せたので、チビをエイッと押してやった。


 腰を下ろし落ち着き、側に落ちていた小さな枝をたき火に与える。


 炎は、それを直ぐには燃やさず、ジワリジワリと赤く染め、

 やがて、くべた枝は白くなり崩れてしまう。


「ここで良いの?」

 隣にいるレティーシアの眼に炎が映り揺らめいでいる。


「ここがいいのっ! もしかして、迷惑?」

 レ、レティーシアまで、揶揄う気か?


「そんなことないわ」

 彼女も、エイッとたき火に枝を投げ、ニコッと微笑んだ。


「出来たぞ!」

 エドワードが告げると、クララが食事を皆に配ってくれた。


 悔しいが……、いやいや、悔しがる必要は無いが、こいつらの料理の腕は確かで、現地調達の食材とは思えないぐらいに美味い。


 じゅるりと舌を鳴らし、


「いっただきまーすっ」

 と配られた食事に手を合わせ、口へと運ぶ、


 うんうん、今日も安定の美味さだ。


 食事が終わると男性陣は、寝床へと向かう。


 女性陣が寝ている間、交代で見張りをする為だ。


「今日も、見張りする気みたいね」


「私がいるから必要無いって言っても聞かないのよ」

 シルフィードが困り顔で答えた。


 大精霊の彼女は睡眠の必要が無い上、索敵は出来なくても、周囲の気配を感じ取る事は出来るらしい……、それすら出来ない俺には、羨ましい限りだ。


「ねぇ、あなた、本当に索敵、出来ないの?」

 しつこい精霊だ。


「そんなに、ソフィアを責めないで」


「責めてる訳では無いのよ」

 庇ってくれたレティーシアに、シルフィードは首を振る。


「不思議なのよ、あれだけ魔力が扱えるのに……、周囲の事に興味が無いのかしら……」

「どういう意味よ」

 さっぱり分からん。


「自分の魔力を操作する為には、魔力を感じ取らなければ、操作できない、索敵は他の生き物の魔力を感じ取る事なのよ……、だから……」


「それで……、興味が無いと……」

 目を瞑り、まず身体を巡る魔力を意識してみる、同じ要領で、外に飛ばす、銀髪が美しく淡く発光する。


 両手を組み祈りを捧げるような愛らしい姿勢で魔力を巡らせる。


 キーン、

 頭蓋の奥から高音が響く、その音も外へ、優しくゆっくりと、


 キーーン、

 大気が震え、森が騒がしくなるのを感じた。

 休んでいたエドワード、ジークフリードも、たき火の側に集まって来る、


 外へ、外へ、

 遠くに、もっと遠くへ。


 ソフィアから発せられる燐光が翼のように広がり、彼女の身体が不自然に浮き上がる。表情もどこかいびつだった。

 すぐに、閃光が走り、皆の視界を奪い去る。


「ソフィア、やめて!」

 遠くでレティーシアの声が聞こえた。彼女は何に怯えているのだろうか?


 レティシアは、ソフィアを掴み離さない。

 仲間達も必死に呼びかけた。


 ソフィアって、誰?


 遠のく意識の先で、大きな塊が見えてきた、その深く黒い渦は際限無く……、全てを喰らおうとしていた。


 俺は、意識を失った。

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