第29話 仮免許

 書類に、名前と性別を書き、それを、受付嬢のリサに渡す。


「へぇ〜.十七歳なの……」

 彼女は呟きながら、何やら準備を始めた。


 エドワードとジークフリードは、既に、冒険者としての資格は持っているらしい。


 それ以外のメンバーが、ここで、登録した訳だが……、


「ねぇ、ほんとに、名前、そのままで良いの?」

 大丈夫なのか、辺境伯も目立つなと言っていたような……、


「問題ないだろ」

 ジークフリードは余裕だ。


「そうよ、あなた、ビビり過ぎじゃないの」

 相変わらず、風の大精霊、シルフィードは、ジークフリードに絡まったままだ。


「うるさいわね、あなたは、登録する必要ないんじゃないの」

「いいじゃない、面白そうだし、フェンリルの化身だって登録するんでしょ」

 いや、お前、四大精霊なんだろ、いいのかよ……。


「出来たわ、これが、仮の証明書よ、無くさないでね」

 仕事の早い受付嬢、リサが五枚の紙を其々に渡していく。


「仮?」

「当たり前じゃない、ちゃんと依頼をこなしたら正式に登録してカードを渡すわ」


 へぇ〜、そうなんだ……、


 それでも、名前と性別だけで、身分証が貰えるなんて、


 ザルだな、価値あるのか……、


「ソフィアさんは、弁償してくださいね」

「ええ、大丈夫よ、彼が全額払うわ」

 しつこいな、こいつ!


「エド、払うの?」

 リサが馴れ馴れしくエドワードにたずね、

「払う訳が……」

「払うわよね!」

 エドワードが否定しそうなので、被せてやった。


 いいから、黙って払え、エドワード、俺は、一文無しなんだぞ!


「払わないわよね?」

 くそっ、リサの奴……、


「もちろん……」

「払うわよね!!」

 払え、エドワード!


「なんで、私が払う必要があるのだ!」

 ちっ、こいつ……、生意気っ!


「そうよね、エドは払わないそうよ、ソフィアさん」

「いいえ、エドワードが、払うわ」

 俺だって、負けないんだから……、


「だから、何故、私が……」

「見たんでしょ」

 強烈なジト目を、エドワードに向けた。


「何を?」

「何をだ?」

 リサとエドワード、幼馴染コンビが、同時に声を上げた。


「言っていいの?」

 いいのか、エドワード、幼馴染の可愛い女の子の前で言って……、払うなら今だぜ。


「ふん、どうせくだらん事だ、言ってみろ」

 こいつ、開き直りやがった。リサの方も、興味津々みたいだ。


「パンツ……」

「なっ!」

「この間、見たでしょっ、私のパンツ!」

 忘れてねぇからな、訓練場でのこと……。


「か、風でめくれたスカートの白い中身など、み、見てないぞ!」

 色まで、言うなっ、バカっ!


「見たのね!」

 リサの言葉に、あわあわとエドワードの目は泳ぎ始めた。反省しろ!


「弁償代は、そこの、ムッツリに請求して下さいっ!」

 バァンと受付のテーブルを叩いた。


「そうね、今回は仕方がないわ、そうするわ」

 ジトッと、リサはエドワードを睨みつけた。


「なっ、なんで、私が……」

「当然よっ!」

 バァーンと、リサと俺は、エドワードを攻めた。


 彼は、耳まで真っ赤にしながら、嬉しそうに、


「見てない、見てない」

 と言っている。


「それぐらいにしてやってくれ」

 豊満な胸を待つ妙齢な女性、シルフィードを腕に絡ませたジークフリードが、仲裁に入った。


 背後には、顔立ちの整った三人の女性が控えている。


 妹ロリのクララ、フェンリルの化身でケモ耳、ロリ巨乳のチビと、王国の第三王女、美少女のレティーシアだ。


 なんだ、あれ? チーレム気取りの下衆が……、


「あなたは、黙ってて」

 バァーンとテーブルを叩き、エドワードに更に詰め寄った。


「弁償なら、俺がするぞ」

 再び、ジークフリードの登場だ。


 ドォーン、


 リサがテーブルを殴りつけた!


「女たらしは、引っ込んでて!」


「えっ……!」

 リサの言い放った言葉に、俺とジークフリードは同時に驚き、

「ジーク、もう放っときなさいっ」

 シルフィードが彼に忠告した。


 リサとは、気が合うかもしれない……、胸も同じぐらいだし……。


「払うわよね!」

 リサと俺は、がっちりと腕を組み、最後の警告をエドワードに伝えた。


「は、払います……」

 流石、俺のエドワードだ、ポンポンと肩を叩き、


「じゃあ、弁償はエドワードが、するという事でいいわね」

 受付のリサに手を差し出した。


「何よ! この手は!」

 共闘の士、リサの返事はつれない。


 何って、決まってんじゃん、


 チーレムの軍門に下った、クララ、チビ、レティーシアには、悪いが、


 俺は、ミッションクリアだ!


「早く、冒険者カードを頂戴」

 ニコニコと、もう片方の手も添えて、両手でカードをせがんた。


「まだ、依頼をこなしてないでしょっ!」

「えっ、だって、弁償したら正式に登録するって……」


「言ってないわ」

「言ってないぞ」

「言ってないわね」

「お腹、空いたわ……」

「ご主人、おしっこっっ……」


 ちっ、勢いで、くれたらいいのに……、


「なんか、あなた、イライラするから、特別な依頼を探してあげるわ」

 なんか、受付嬢のリサは、服の裾をまくり、やる気に満ち溢れている。


 仕様がないか……、


 でも、できれば、討伐系がいいな、魔王とか、いないかなぁ。


「今日は、もう遅いから、明日の朝、また来なさい、すっごいの準備しとくわ」

 彼女は、書類の整理を始めた。


「エドワード、覚悟しときなさい」


 受付嬢のリサは、エドワードに別れの言葉を告げ、それを最後に、俺達は、冒険者ギルドを出た。

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