第321話 燎原の火(りょうげんのひ)

 戸村伊万里はカーテンのあいだからそっと街の景色を見下ろした。

 窓ガラスに映った自分の顔の向こうに街の灯りが散っていた。

 夜が更けたこの時間でも大小様々な車がロータリーを行きかっている。

 規則さと不規則さが混同した車道はまるで光の血管のようだ。


 (これが平時の六角市で平時の世界。ここから見えるあのビルから川相総かわいそうは抗議文をまいた)

 

 戸村伊万里は開いたカーテンを元に戻し備え付けの机にある2in1のPCに向かった。

 ――川相総かわいそうと口にしながらマウスに触れると画面に明かりが宿った。

 一度、マウスをクリックし下向きのカーソルキーに指を当てる。


 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


 ■黒杉工業 代表取締役 黒杉太郎の被害者と思われる人物。


 ●川相総。元、黒杉工業勤務。


 六角駅前のロータリー前のビルから抗議文をまき飛び降り自殺。

 「罪を償え」はなにを意味しているかは不明。


 ネットでは、プランターに落下したため大事に至らなかったという情報もあるが、じっさいは頸椎損傷により即死。

 ビルのうえに残されていた遺書には、娘の川相憐の人生を心配する旨が書かれていた。

 遺書は指紋、筆跡鑑定により川相総の直筆だと断定されている。


※補足 手すりに真っ黒な絵があった(?)


 ●川相憐。元ショップ店員。

 

 川相総の娘で家に閉じこもっている。

 川相憐の母親は川相憐に宛ての採用通知(有名ブランドのパタンナーで採用)を勝手に開いて捨てた。   

 ※法的には「信書開封罪」

 その後、引きこもってしまった娘に罪の意識を抱き自殺。


 ●哀藤祈、黒杉工業に勤めていた若手社員。

 

 六角駅で飛び込み自殺。

 死の直前に自殺をほのめかしていた(遺書を書くためにノートを購入?)というコンビニ店員の証言あり。


 結局ノートは見つからずじまい、購入したのかも不明。

 インターネット等で購入した可能性もあり。

 (事件性が否定され捜査令状がおりていないために追跡調査はしていない)


 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


 戸村刑事が六角中央警察署に研修(調査)にきた理由。

 内閣官房機密費の流れを探るため。


 ■関与が疑われる個人と組織(ソースは戸村刑事)


 ・鷹司官房長官(総理が入院中のため現在、内閣のトップ)


 ・四仮家元也(脳神経外科の医師、元、六角第一高校の校長、まだ六角市在住?)

 →官房機密費流用の鍵を握っている?

  かつて六角市にて佐野和紗という少年を保護したことがある。


 ・NPO法人『幸せの形』(孤児や遺児などの生活のサポートしている非営利団体)

 →官房機密費流用の鍵を握っている?


 ■関与を疑っている個人と組織(独断と偏見)


 ・株式会社ヨリシロ

 →六角市でいちばんの名家であり権力者。

 なにかと自由に動ける。

 市内にある高校の改修工事などにも関わっていて巨額のお金が動かしても怪しまれない。


 企業としてヨリシロの頼みなら断れない人物は社員、一般人、含め大多数にのぼる。


 ・六角神社

 →宗教法人は非課税。玉串料たまぐしりょうなどの名目で官房機密費をいったんプールするのに好都合?

 社殿は滋賀県などに見られる神仏共存の造りをしている。

 よって社殿の建て替えなど「氏子うじこ」からの莫大な寄付も可能、ここに官房機密費を流すこともできる。


 ・国交省

 →株式会社ヨリシロを経由で黒杉工業に大量のソーラーパネルの発注をしている。

 黒杉工業からいくらかキックバックさせている? あるいは株式ヨリシロがさきに中抜きして国交省に還流している?

 

 ・黒杉工業

 →社員や関係者に自殺者が多い疑惑の大手建設会社。


 ・音無霞、黒杉工業(?)との会食で性的暴行を受けたと六角中央警察署に相談にきていた。

  被害届をすぐに撤回している。(黒杉工業の顧問弁護士が接触か?)


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 文字が滝のように流れていた画面が止まり戸村伊万里が押していたカーソルキーは効果をなくした。


 (六角市の結界は救偉人の先輩である国交省の近衛氏が担当している。そういう意味では……)


 戸村伊万里はそこから上向きの矢印キーを押す。


 (九久津毬緒かれがバシリスクを倒した翌日に国交省が株式会社ヨリシロ経由で大量のソーラーパネルを発注したのはこのうえなく正しい)


 途中でキーボードから指先を外しマウスに持ち替え画面の数行をドラッグして「DEL」を押した。

 戸村伊万里は同じ行為を三度繰り返す。 


 (近衛氏の即断は尊敬にさえ値する。ただあの日本当にヤキンを動かすほどの緊急事態だったのか? たしかに相手は上級アヤカシでバシリスクに壊滅させられた町は世界中にある。近衛氏自身が署長がゴルフしていた範囲を含め守護山の麓、半径十キロ圏ほどをコントロールすればなんとかなったんじゃ……。六角市市全体の結界バランスを崩すなんてあまりに危険すぎる。逆を考えればそうせざる負えなかった状況。署長のいた地点にさえ地鳴りがきこえるなんてよっぽど……ダメだ。仮にも救偉人の先輩。きっとなにか考えがあってのこと)


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 ■黒杉工業 代表取締役 黒杉太郎の被害者と思われる人物。


 ●川相総。元、黒杉工業勤務。


 六角駅前のロータリー前のビルから抗議文をまき飛び降り自殺。

 「罪を償え」はなにを意味しているかは不明。


 ネットでは、プランターに落下したため大事に至らなかったという情報もあるが、じっさいは頸椎損傷により即死。

 ビルのうえに残されていた遺書には、娘の川相憐の人生を心配する旨が書かれていた。

 遺書は指紋、筆跡鑑定により川相総の直筆だと断定されている。


※補足 手すりに真っ黒な絵があった(?)


 ●川相憐。元ショップ店員。

 

 川相総の娘で家に閉じこもっている。

 川相憐の母親は川相憐に宛ての採用通知(有名ブランドのパタンナーで採用)を勝手に開いて捨てた。   

 ※法的には「信書開封罪」

 その後、引きこもってしまった娘に罪の意識を抱き自殺。


 ●哀藤祈、黒杉工業に勤めていた若手社員。

 

 六角駅で飛び込み自殺。

 死の直前に自殺をほのめかしていた(遺書を書くためにノートを購入?)というコンビニ店員の証言あり。


 結局ノートは見つからずじまい、購入したのかも不明。

 インターネット等で購入した可能性もあり。

 (事件性が否定され捜査令状がおりていないために追跡調査はしていない)


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 戸村刑事が六角中央警察署に研修(調査)にきた理由。

 内閣官房機密費の流れを探るため。


 ■関与が疑われる個人と組織(ソースは戸村刑事)


 ・鷹司官房長官(総理が入院中のため現在、内閣のトップ)


 ・四仮家元也(脳神経外科の医師、元、六角第一高校の校長、まだ六角市在住?)

 →官房機密費流用の鍵を握っている?

  かつて六角市にて佐野和紗という少年を保護したことがある。


 ・NPO法人『幸せの形』(孤児や遺児などの生活のサポートしている非営利団体)

 →官房機密費流用の鍵を握っている?


 ■関与を疑っている個人と組織(独断と偏見)


 ・黒杉工業

 →社員や関係者に自殺者が多い疑惑の大手建設会社。


 ・音無霞、黒杉工業(?)との会食で性的暴行を受けたと六角中央警察署に相談にきていた。

  被害届をすぐに撤回している。(黒杉工業の顧問弁護士が接触か?)


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 戸村伊万里はマウスから手を放した。


 (国交省と株式会社ヨリシロはこのリストから削除してもいい。六角神社の設計も近衛氏によるもの、そして宮司の社禊氏も付喪師という能力者。宗教法人がいかに非課税とはいえ、官房機密費の関与への可能性は低い。滋賀県というもの神仏交流が根付いた土地で六角神社もこの方式を取り入り入れている、六角神社も削除対象でいい)


 戸村伊万里自身の手によって女性警察官の独断と偏見が減っていく。


 (六波羅班のメンバーはアヤカシの存在を知らないのだから無理はない。それでもアヤカシの知識がない人間ものが推理するとこうなるっていうのは新しい発見だわ。けど本来、警察官はそれでいいのよね)

 

 戸村は2in1PCの横でオブジェのように置かれている小さなクリスタルスカルの額を指先で弾いた。


 (ビラが落ちたというコインパーキングのノボロギク。私たち・・にとっての天変地異の前触れはそっち。あとこのなかで四仮家元也と官房機密費に繋がりそうな情報といえば……)


 戸村伊万里は2in1の画面の直接触れた。

 タブレットとしても使える画面の一文がドラッグされる。


 (この補足にある手すりにあったという真っ黒な絵? 川相総かわいそうの事件が事件だけにオカルト的な噂?)


 戸村伊万里は画面から指を離し再度マウスに持ち替えた。


 (六角市を騒がせている黒杉工業と官房機密費の関係は薄そうね。どのみち六角市の管轄は六角市にある警察組織。黒杉工業は六波羅さんたちに任せておこう。各警察署の神隠しはX(並走)軸が交差した影響、これもとうてい一般の警察職員の知りえる情報じゃない)


 一度マウスをクリックし画面を入力状態に戻してから、テンキーの十字に似たプラスのキーを押して区切り線を入れた。

 再度マウスに手をかけて十行ほどをコピーペーストする。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


 ■黒杉工業 代表取締役 黒杉太郎の被害者と思われる人物。


 ●川相総。元、黒杉工業勤務。


 六角駅前のロータリー前のビルから抗議文をまき飛び降り自殺。

 「罪を償え」はなにを意味しているかは不明。


 ネットでは、プランターに落下したため大事に至らなかったという情報もあるが、じっさいは頸椎損傷により即死。

 ビルのうえに残されていた遺書には、娘の川相憐の人生を心配する旨が書かれていた。

 遺書は指紋、筆跡鑑定により川相総の直筆だと断定されている。


※補足 手すりに真っ黒な絵があった(?)


 ●川相憐。元ショップ店員。

 

 川相総の娘で家に閉じこもっている。

 川相憐の母親は川相憐に宛ての採用通知(有名ブランドのパタンナーで採用)を勝手に開いて捨てた。   

 ※法的には「信書開封罪」

 その後、引きこもってしまった娘に罪の意識を抱き自殺。


 ●哀藤祈、黒杉工業に勤めていた若手社員。

 

 六角駅で飛び込み自殺。

 死の直前に自殺をほのめかしていた(遺書を書くためにノートを購入?)というコンビニ店員の証言あり。


 結局ノートは見つからずじまい、購入したのかも不明。

 インターネット等で購入した可能性もあり。

 (事件性が否定され捜査令状がおりていないために追跡調査はしていない)


 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


 戸村刑事が六角中央警察署に研修(調査)にきた理由。

 内閣官房機密費の流れを探るため。


 ■関与が疑われる個人と組織(ソースは戸村刑事)


 

 ■関与を疑っている個人と組織(独断と偏見)


 ・黒杉工業

 →社員や関係者に自殺者が多い疑惑の大手建設会社。


 ・音無霞、黒杉工業(?)との会食で性的暴行を受けたと六角中央警察署に相談にきていた。

  被害届をすぐに撤回している。(黒杉工業の顧問弁護士が接触か?)


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 ・鷹司官房長官(総理が入院中のため現在、内閣のトップ)


 ・四仮家元也(脳神経外科の医師、元、六角第一高校の校長、まだ六角市在住?)

 →官房機密費流用の鍵を握っている?

  かつて六角市にて佐野和紗という少年を保護したことがある。


 ・NPO法人『幸せの形』(孤児や遺児などの生活のサポートしている非営利団体)

 →官房機密費流用の鍵を握っている?


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 (鷹司官房長官、四仮家元也、NPO法人『幸せの形』。結局のところは私が持ってきた以上の情報はないか。NPOを隠れ蓑にして官房機密費を流していたのなら私は許さない)


 戸村伊万里はそっと席を立つ。


 (世界のごみ箱。ジーランディア。考えたくはないけど『円卓の108人』へ献上? ただそれに対する見返りはなに? 別件で動いていそうなのはアンゴルモア。アンゴルモア討伐に当たった一条氏と二条氏でさえ、あの作戦は失敗だったとしている……)


 戸村伊万里はスマホを手すると「着信履歴」を表示させ、数日前の日付から

 「戸村伊織」の名前を見つけだした。


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