第303話 視覚の死角
「さ、沙田くん。あなた危ないわ」
社さんにすこし怒られた。
まあ、こうなることはわかってた。
あとは
いや、見なくても
こいつ
でも、
今回は大丈夫だ。
鳥かごのようになったイヤリングのなかに微動だにしなくなったスーサイド絵画が吸い込まれていく。
今度こそ、確実に捕獲する。
今回はスーサイド絵画がイヤリングのなかに入っていったのを
よし、作戦終了。
「いくらなんでも無謀すぎるわよ」
慎重なみんなにとってはそうだよな。
けど、鏡のなかの虚像の動きがややこしくて。
だから
結局のところ社さんの考えた作戦はスーサイド絵画から受ける俺のリスクを減らすため。
ありがたいけど式神の虚像は俺には合わなかった。
社さんにまったく悪気はないことはわかってる。
ただ、俺が適応できなかっただけだ。
たぶん社さんが九久津とバディだったころなら余裕で成功してたはず。
社さんにその気はないかもしれなけど無意識に九久津と組んでいたころの戦いかたをしてるのかもしれない。
「ごめん。でもこれが俺の戦いかたなんだ」
「……あのニオイっていってたのも作戦のうち?」
「あの時点ではまだ考え中の作戦だったけど。スーサイド絵画も人の声に反応するのか?とか。話の内容が理解できるのか?とか考えてたんだ」
「沙田くんの考えはスーサイド絵画にニオイをつけて自分の視界を遮断しニオイを追ってスーサイド絵画を捕獲しようとしたってことよね?」
「そう。だからスーサイド絵画は俺の言葉を理解できるのかとか考えた。もし理解できてたらスーサイド絵画は俺のことを警戒するだろうし。でも俺はもともとニオイの元を持ってない。結局のところスーサイド絵画は俺の言葉がわかったかどうかは謎だけど」
「認識してたわ。私たちが考えるような思考はないと思うけど動きはたしかに鈍ってた」
「そっか。俺いつか四階のピアノを見て思ったことがあって。あのピアノって俺らのこと認識できてるのか?ってさ。じっさいピアノに目はないわけだし」
「あのピアノは廊下を通る人のことを理解してるわよ」
「やっぱりそうなんだ」
「人間でいうところの五感、いや六感があるの」
このなかに藁人形の腕とスーサイド絵画が収納されている。
この十字架のイヤリングってけっこう重要なアイテムだよな。
社さんもこのタイミングでようやく式神たちを解除した。
同時に目元の
社さんはそれを手のひらで受ける。
「俺の考えは当たってたんだ。スーサイド絵画も表が見る”視覚”なら裏は見えない”死角”になるんじゃないかと思って」
「そこで大きくした式神の裏に
「そうそう」
さすが社さん、俺がやったことのすべて理解してる。
「
「
「そう、あくまで本体はこの俺。今の俺なら決まった位置に
「まあ、肉体が忌具に触れるわけじゃないからその説は一理あるかもしれない……。でも危険なのには変わりはないわ。ただ裏を返せば沙田くんの冒険心ってアヤカシとの戦いに慣れてきたってことなのかも?」
自分でもそう思えた。
「かもしれない。ところで社さんは、いつどうやってここにきたの?」
「美子に呼ばれたのよ。まさに沙田くんたちが
俺の想像どおりだった。
やっぱり寄白さんが社さんと虫の報せでコンタクトをとってたんだ。
能力者が虫の報せを使ってるか使ってないかなんて
俺もなんだか戦いかたがわかったきた気がする。
「虫の報せって意外と戦闘向きんなんじゃない?」
「う~ん。そうかもね。私も今そう思った」
「あとは寄白さんのほうだね」
「そうね。あの女の人も辛そうだし。沙田くん。初動時
初動? 最初の
「えっと、それって
「ええ。そうよ」
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