第32話 不調と不和

 昨夕きのうはモナリザとの死闘だった。

 あんな経験をしたけど俺は怖気づいたわけじゃない。

 逆だった……もっと……。

 俺があの場所に居てなにかの役に立ったのか……? ただ机を運んだだけ。

 まあ、それがモナリザを退治するきっかけにはなったかもしれない。

 でも、その作戦を考えたのは寄白さんと九久津だ。

 あのあとに寄白さんも九久津も俺を気づかってくれた、でも、なんとなくヘコむ。

 う~ん。

 微力ながらも役に立ったと思っておくか……。

 

 寄白さんと九久津は、昨日の今日なのにふうつに過ごしてる。

 やっぱり経験値が違うな、俺は急に自分がダメに思えてきた。

 そう、俺だって寄白さんと九久津の役に立ちたい、そんな感情のほうが大きくなってきていた。


 あ~ダメだ、ここでいったん頭の中を切り替えよう。

 ここ数日の出来事でいろいろ考えすぎだし、疲れも溜まってる。

 ついでになんかフラつくし寒気もする、さらにはなんの異変もないのにトリハダまで立ってきた。

 俺は朝からずっと体調不良だった、とりあえずは昼休みまで耐えて体力を回復させよう。

 あと一時間か……。

 まあ、この不調の原因は昨日も夜遅くまでスマホでゲームしたのと深夜アニメで夜更かししたせいもあるか。


 ※


 昼休み、俺は作業服を着た人とすれ違った。

 今日校内点検やるなんてホームルームあさいってたっけ? そのまま教室に戻っていつもどおり弁当を机の上に置いた。

 おっ、あ、ああぁぁ!?

 ヤベー、弁当箱を逆さに置いてしまった。

 やっぱ、今日は調子出ないな。


 弁当箱の向きを正しく戻してから確認のためにふたを開く。

 ああ~やっぱりな。

 ひっくり返って中身がぐちゃぐちゃになってる。

 てか、今日も海苔弁だったのか、……あっ……海苔弁の法面が崩壊してる。

 なんて不吉な……これも寄白さんが預言めいたようにいってたしな。

 ……なんとなく食欲も失せたし食べるのやめとこ。

 俺はそんなことも合わり気分的にも現在進行形で体調不良だった。

 

――――――――――――

――――――

―――


 六角第一高校、校長室。

 繰は束になった領収書の数字をPCに打ち込んでいた。

 そんな事務作業の手がぴたりと止まる。


 (えっ!? ……なにかが校内に入ってきた……。四階。しかも私でも・・感じとれるくらいのモノが……)

 

 繰はその異変を感じてマウスを握ったまま固まり微動だにできないでいる。

 

 (こ、これはなんなの? 下手をすれば学校自体が消し飛ぶ)

 

 繰はとてつもない危機感を抱くと同時にすこし遅れて焦燥感を覚えた。


 (堂流が亡くなったあのときのような嫌な予感……この気配は……)


 繰は校長室の中をぐるりと見渡した。

 繰のこめかみから一筋の冷や汗がナチュラルメイクのファンデーションを溶かす。

 視線のさきにはインデックスの飛び出た壁時計がある。

 現在の時刻午後三時三十五分。


(この時間って今日の工事が終了する時刻よね……? じゃあ……点が崩れた。もうすでにボーダーを超えてしまっていた……の……?)

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