第2話

初めは罪悪感もあった。

だがもう薄れていっている。






《戻り人》は色んな想いでここにやって来る。




受験に失敗した。


好きな人にフラれた。




事故にあった。




記憶を消さずに戻れるなら、そんな不幸に合わずに済むだろう。





記憶を消さなければ、その人は幸せになれるかもしれない。



でも記憶を消したら、また同じ。





人は経験で行動する。


その先の出来事に経験がなければ、


過去の経験から行動する。




《戻り人》たちは、過去の経験から行動し、間違え、失敗し、不幸な目にあった。



たとえその前に戻り、やり直したとしても



記憶が無ければ彼らは全く同じ行動をする。過去の経験で行動するからだ。


そして同じ不幸を繰り返す。




繰り返す。


繰り返す。





そしてまたここにやってくる。



そして僕は告げる。






『あなた、5回目ですよ』










時検(時間検問官)の間ではいくつかのルールがある。


1.《戻り人》の希望する日時に戻す。

2.戻った日時から先の一切の記憶を消す。

3.五回目以降の戻りは認めない。

また五回戻りにきた者には今まで繰り返してきた全ての記憶を蘇らせる。


4.《戻り人》には上記のルールを全て伝える。


5.《戻り人》はルールを聞いた上で戻るかどうかの選択をすることができる。






一言で言うなら残酷であった。



《戻り人》には何一つの得もない。


まして五回戻ってしまえば、延々と繰り返してきた不幸を見せつけられ、その先を生きなければならない。




残酷である。






初めのうちは罪悪感もあった。

だがもう薄れていっている。




どうせ未来は変えられないんだよ。


そう伝えても人は戻る。


微かな希望に掛けて。





罪悪感が薄れていっているというのは嘘か。



目を背けているのだ。



その希望は打ち砕かれるから。

待っているのは絶望しかないのだから。























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時間検問官 寝坊丸 @golgo14

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